世界最多512個ディンプルの『JPX DE』
ミズノは3月18日、ゴルフボール『JPX DE』の記者発表&試打ラウンドを開催した。東京都心では風速17.7m/sの春一番が吹き、ゴルフ場では砂埃が舞うほどの悪天候の中、発表されたのが空気力学を応用した世界最多512個のディンプルを謳うボール。しかも、そのうち240個は直径1.3mmのプチディンプルをデザインし、最高到達点から落下までに高い揚力性能を発揮するという。
記者発表冒頭でゴルフ事業部事業企画部の長崎俊幸部長は、「ミズノがボールに参入して10年目。これまで年間20万ダース程度の販売に止まっています。市場は大手三社で寡占しており、一方でボールの販売単価も落ちている。ただ、この10年の研究開発で蓄積した知見は大きいと思います」――。
独自の研究開発と同時並行で進めてきたのが産学協同。『JPX DE』は、飛翔軌道後期の揚力に注目したわけだが、共同研究したのが福岡工業大学とミズノのゴルフ以外の研究分野。
「回転球体の空気抵抗を研究している福岡工業大学と、当社のサッカーボールや硬球を研究している部署、そしてゴルフボール企画開発課が共同で5年間にわたりゴルフボールの風洞実験などを行ってきました」――。
何が分かったのか? 「男子プロの弾道では、初速は約75m/sですが、落下中の速度は約28m/sと、時速にして170k/hほど違います。これだけの差がありながら、それぞれの速度域にあわせてボールは形を変えることができないため、多くの場合は最高到達点までを重視したディンプル開発になってしまいます。しかし、最高到達点までのキャリー(高速域)に影響せず、最高到達点から落ち際(低速域)までの揚力を増加させるディンプルが開発できれば、飛距離が伸びると分かったのです」(ミズノ・ボール企画開発課・宇田雅史氏)
それで辿り着いたのが直径1.3mm、深さ0.15mmのプチディンプル。それが落下中の揚力を、高速域に影響せず増加させるという。結果、ドライバーHS38m/s相当だとドライバーで3ヤード、6番アイアンでは8ヤード飛距離が伸びたという。
当日は生憎の強風。デモストレーションでは、チームJPXの大矢明彦、牛島和彦、仁志敏久と同社契約の藤井かすみプロが登場。他社競合品との比較試打を行ったが、完全勝ち越しとはならなかった。飛距離を謳うボールだけに不安が残るが、そんな時は藤井かすみプロが一掃。
「昨日も他社品と比較試打をしましたが、計測ではなく実測で『JPX DE』の方が確実に飛んでいます。落下地点で確認しました!」――。