トゥルーテンパー S.ヘネシー社長に聞く
2月15日(金)から3日間にわたって東京ビッグサイトで開催された「ジャパンゴルフフェア」。今年も大盛況のまま幕を閉じたゴルフギアの祭典には、有名プロゴルフファーのみならず、各ブランドのリーダーも多く姿を見せた。米国の拠点をベースにワールドワイドなビジネスを展開する「トゥルーテンパー」のスコット・ヘネシー社長兼チーフ・エグゼクティブオフィサーもその一人。ダイナミックゴールド、プロジェクトX、グラファロイといったブランドを発信し、スチールシャフト部門において世界一のシェアを誇る老舗メーカーのトップを直撃した。
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―今回の来日と、2012年の振り返りについて聞かせてください。
「弊社にとっても日本の市場は非常に重要です。昨年に続きゴルフフェアのために来ました。昨年は“良い年”ではありましたが、“素晴らしい年”ではなかったと思います。特にアメリカ市場では上半期は好調でしたが、下半期は不安定な経済状況もあり、高い評価はできたとは言えません」
―今春、日本でリリースされる新製品について
「まずはプロジェクトXシリーズが、日本市場において最も重要なブランドだと考えています。今回『Peject X 95 Fligeted』は重量帯を100グラム以下に設定し、キックポイントをフローさせた構造を搭載して、多くのプレーヤーに受け入れやすいようにしました。また、グラファイトの『Project X PXv tour 52』は、 プロジェクトXシリーズで最軽量のモデル。“ツアー”の名前がついていますが、とても軽量。それでいてツアーにも対応できる性能を引き出せたと思います」
―2009年まで販売していた「グラファロイ・ブルー」がリニューアル(Blue Featuring Speed Coat)されました
「グラファロイは、米国では非常に成功したブランドだと認識しています。ただプロジェクトXシリーズとはまったく違うもの。プロジェクトXは低弾道、低スピンを追求し、価格帯も高いものです。一方でグラファロイは、軽量化したものから重たいものまで、幅広いゴルファーにリーチしています。中価格帯でもあり、ゴルファーが手に取りやすいことを考えながら、展開しています」
―グラファロイはバッバ・ワトソンが使用していますね
「みなさんご存知のように、ピンクのシャフトを使っています。最初に発注が来たときはとても驚きましたよ。ただ、バッバは他の選手とは違うものを好みます。マスターズで彼が優勝してからというもの、数千本の同じシャフトが出荷されています。決してやさしいモデルではありませんが、皆さんが楽しんで打ってくださっているということでしょう」
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―トゥルーテンパーというと、日本ではやはりスチールがメインという印象
「もちろんそうですね。弊社には110年の伝統があります。テンパーというのはスチールシャフトを製造するうえでの、テンパリングという工程から名づけられています。でもこれからはグラファイトシャフトも世界的に伸ばしていきたいと考えています。もちろん我々にとっても多くの使用プロを抱えることは重要です。ありがたいことに、欧州ツアー、PGAツアー、ウェブドットコムツアー、日本ツアーでのスチールシャフトの平均使用率は90%近いものがあります。ただ、すべてのアマチュア選手が、ツアープレーヤーと必ずしも同じものを使えるわけではありません。日本に限らず、どの国でもアマチュアゴルファーの平均年齢は高くなっています。それゆえ、スイングスピードは遅くなり、軽いシャフトの需要は高まっている。また、ツアープレーヤーの間でも、特に米国、欧州では軽いシャフトを好むのが現在のトレンドになりつつあるんです。グラファイトや、軽量シャフトの開発に注力するのは、彼らの要望に応える意味もあるんですよ」
―他社との違い、アイデンティティは
「我々はシャフトの専門メーカーです。今のところクラブヘッドを作る予定もありませんし、作ろうとも思いません。ただ、シャフト製造のノウハウを使って、アンテナのほか、ラクロスやホッケーのスティックなども製造しています。チアリーディングのバトンにおいては世界最大のシェアがあります。小さな市場ですが、ナンバーワン。弊社グループの20%の売り上げはゴルフシャフト以外によるものです」
―日本とアジア市場について
「まず日本は世界に2番目のマーケットとして非常に重要です。昨年は残念なことに震災があったり、経済が落ち込んだりと、大変な時期がありました。ただ、年末には新しいリーダーも誕生し、現在のところ株式市場も順調に推移しているように見えます。為替も市場にとって良い流れでしょう。これまでの精密機械製造などにおける実績から、日本は革新的な情報を発信していくのに最適だと考えています。良い人々がいて、良い食事もある。日本を中心に、アジアに様々なプロダクトを提供していきたいと思います」