HOT LIST JAPAN受賞クラブ 開発者インタビュー Vol.2(本間ゴルフ編)
「2012 HOT LIST JAPAN」で高評価を得たクラブは、どのように開発されたものなのか。第二回目は、山形県にある本間ゴルフ 酒田工場を現地取材するとともに、工場長の諏訪博士氏にインタビューを行った。
【2012 HOT LIST JAPAN受賞クラブ】
・本間ゴルフ BERES W103ウェッジ
【プロフィール】
株式会社本間ゴルフ 諏訪博士(すわひろし)氏
1955年生まれ。1978年本間ゴルフに入社後、酒田工場にてクラブ製造部組立や、製品開発部などクラブ製造のキャリアを積み重ねたのち、2009年に執行役員 兼 酒田工場工場長 製品開発本部長に就任し、現在に至る。
新発想は「メッキの神様」のおかげ!「BERES W103ウェッジ」の誕生秘話
GDO:HOT LISTでメダルを受賞した「BERES W103ウェッジ」は、業界初のWメッキ仕上げで、プロ、アマチュア問わず大変話題になりました。そもそもどのような経緯でこのクラブの発想が浮かんだのでしょうか?
諏訪氏:他のクラブの開発同様、特別なことは何もありません。ここ酒田工場では開発のためのクラブテストフィールドを3年前に新設し、300ヤードを越すドライビングレンジに加え、バンカーやアプローチのテストフィールドも大変充実しています。多くの契約プロがここへ来て、クラブのフィッティングや開発のためのフィードバックを行うのですが、彼らのウェッジへのこだわりは大変高いものであると痛感したことが発想の始まりでした。様々な条件のもとでも、絶妙な距離感の調節ができるウェッジを求めています。ノーメッキのウェッジはスピンも効くし、打感もいいけれど摩擦が多くて抜けが悪いと感じる時があります。また、フェースが柔らかいので消耗が早い。世界に誇れる本間のメッキ技術を応用して、最高のウェッジを作れるのではないか、と思いました。
GDO:そこでフェースとソールに異なるメッキ加工を施したウェッジを思いついたのですね。
諏訪氏:そうです。フェースは打感を維持し、錆を防いでスピン性能が高くなるようニッケルメッキ加工、ソールはウェッジの命であるバウンスの良い状態が保てるようなハードクロム加工を施しました。酒田工場には「メッキの神様」と呼ばれるカリスマがおりまして(笑)、彼がいたから、クラブに異なるメッキ加工を施す、なんて常識外れの発想が生まれ、そして実現したことは言うまでもありません。
GDO:開発から商品化まで、すべては順調に運んだのでしょうか?
諏訪氏:できあがったばかりのクラブをツアー会場に持ち込んでプロに打ってもらったところ、すごく気に入ってもらえました。すぐに試合で使って、その選手が優勝したり、結果にもつながりました。評判が評判を呼んで、多くの選手から「使いたい」とリクエストをもらうことも多いですね。商品化する際は販売予測をたてて売上目標を決めるのですが、発売当初から今まで、目標を下回ったことが一度もないくらい、アマチュアの方からも好評です。
GDO:素晴らしい結果ですね。成功の要因は何だったのでしょうか。
諏訪氏:とにかくいつもゴルフのこと、クラブのことを考えていることが楽しいのです。いつも考えているから夢にまで出てきてしまって(笑)、思いついた発想が夢なのか現実なのかわからなくなる時があるくらいです。そのような発想を酒田工場のような素晴らしい施設の中で施策し、実験し、プロからアドバイスをもらい、また改善して・・・と議論と検証と開発を繰り返していくうちに素晴らしい商品ができあがるのです。発想がいくら良くても、それに伴う設備や具体化するために必要な設計、そして実際に商品におとしこむ技術が無くては良い商品にはなりませんから。
GDO:なるほど、すべての条件が揃って、このような素晴らしい商品が生まれたのですね。「HOT LIST JAPAN」で選ばれたことについてはどのようにお考えですか。
諏訪氏:性能が良いからといって必ずユーザーに受け入れられるわけではありません。知ってもらうため、使ってもらうための戦略やプロモーションが大切です。我々もそのような努力を常に行っていますが、「HOT LIST JAPAN」のように媒体がある一定の基準でクラブを評価することでユーザーの情報が多くなることは本当にありがたいですし、素晴らしい企画だと思います。
GDO:今後、「HOT LIST JAPAN」へ要望がありましたら教えてください。
諏訪氏:やはり他のメーカーの受賞クラブが気になります。どのような部分がどのような基準で評価されたのか、より詳しく知ることができたらうれしいですね。