米ツアー本格参戦からひと回り 小平智が思うこと
◇米国男子◇ザ・プレーヤーズ選手権 事前情報◇TPCソーグラス(フロリダ州)◇7189yd(パー72)
今季出場した10試合で予選落ちが4度あり、最高位は32位。フェデックスカップランクは162位に低迷する。数字だけ見れば、小平智は苦境に立たされていると映るだろうが現実は少し違う。毎年、翌シーズンの出場権が得られる同ランク125位以内を目指していた石川遼や岩田寛と異なるのは、小平には優勝者として2年シードがあるということ。今年の成績がどうであれ、来シーズンも確実に、米ツアーで戦うことができるのだ。
開催時期が5月から3月へと移ったが、小平の米ツアー本格参戦は昨年の今大会から始まった。ようやくひと回りしたところだが、「優勝はしたけど、まだアマチュアからプロになったときの感覚でやっている。日本でもシードを獲れたのは3年目だった」という。小平が国内ツアーにデビューしたのは2011年。賞金シードを獲得したのは3シーズン目の13年だ。
コースセッティングが違い、フィールドも分厚い。ひと筋縄ではいかないことは想像に難くない。「日本だと難しくてボギーを打ちそうなのは18ホール中1、2ホール。それがこっちだと半分ある。セカンドの距離はだいたい200ydくらいだし、気を抜いたらすぐダボになる」。その現実にどう対処していくか?小平は「ゴルフを変えずに成長したいと思っている」とプランを語った。
「スイングを変えるとかは、基本的には考えたくない。急激には変わらないと思うので、自分ができる限りのゴルフで戦いたい。良いものを伸ばして底上げしたい」。最近は、瞬発力を養うために、野球のトスバッティングもトレーニングに取り入れた。地道に、楽しみながら、じっくり力をつけている。
思い出してみて欲しい。昨年11月、国内ツアーに出場した小平は、最終戦「日本シリーズJTカップ」で優勝を飾っている。「日本と世界の差はああいうところだと思う。1年前と比べて飛距離も少し伸びているし、身体の面でも疲れなくなっている。全体的に底上げは出来ている」。それでも、世界の壁を突破するのは容易ではない。
「日本で観ている人は、こっちに来て成績が残せない、苦労しているって思っているかもしれない。たしかに成績だけ見たらそうかもしれないけど、それはやった人にしか分からないツラさ。でも、僕はあまりツラいとは思っていない。この状況を抜けられれば成長できると思うので、どちらかといえば楽しみの方が多いです。みんなには心配を掛けているけど、自分的にはそんなに心配していない」――。久しぶりに見た小平の顔は、無精髭を蓄えて精悍さを増していた。(フロリダ州ジャクソンビル/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka