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みんなが待ってたウッズの復活 イーストレイクの歓喜

◇米国男子◇ツアー選手権 最終日(23日)◇イーストレイクGC(ジョージア州)◇7385yd(パー70)

「1980年、バルタスロールのジャックみたいだ」。タイガー・ウッズが5年ぶりの優勝を手にする前、最終組で一緒にプレーしたロリー・マキロイ(北アイルランド)は18番ホールでそう語りかけた。彼の言う同年の「全米オープン」は、日本でも青木功が演じた“死闘”が広く知られている。その相手のジャック・ニクラスは当時、プロ転向後初めてゼロ勝に終わった前年を経て、スランプからの脱却を全米中から期待されていた。

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「(ニクラスのような)タイトなズボンをオレは履いていないし、あんなに髪もないけどな」。マキロイにそう笑い返したウッズは、当時40歳だった“帝王”の何倍ものブランクがあった。その分、カムバックを待ちわびた人の数も、積み重なった思いの量も上だったかもしれない。

場内で他の組の選手を見ていても、突発的な大声援からウッズがどこでプレーしているか想像がつく。注目度の高さはコース外でも同じで、NBCで放送された週末のテレビ視聴率は3日目の時点で前年比142%の3.14%。最終ラウンドは同206%の5.21%と、今季のPGAツアーの中継でメジャーを除く最高数値を記録した。

ウッズは、2013年「WGCブリヂストン招待」での通算79勝目を最後にタイトルから遠ざかった。ひざの故障、不倫問題発覚などによる2009年末以降の一時期を考えると、腰痛に端を発した今回は2回目の長期離脱と言えた。

昨年4月、前例の少ないフュージョン手術という手法で、4回目の腰の手術に踏み切った。術後の痛みが取れるまで日常生活もままならない時期もあった。「僕の残りの人生はどれだけつらいものになるのか…。ゴルフをするどころか、座れない、歩けない。横になっても腰と足の痛みが取れない」。同年秋には現役引退の可能性すら口にした。

42歳になった今年1月にツアーに復帰し、少しずつ好成績を残すようになってからも、ウッズは結果に一喜一憂することなく「これもプロセスだ」と繰り返してきた。痛みなく生活できること、ゴルフができることをまず喜び、上位争いの回数を増やした。7月の「全英オープン」で6位、8月の「全米プロ」で2位。メジャーで再び優勝争いを演じ、多くの人が口走った「不可能」を、少しずつ現実のものにしてきた。

今大会のある朝、イーストレイクGCにはナイキのトレーニングウェアに履きなれたエアマックスのシューズを合わせ、ひとりウォームアップ用のトレーラーに歩いていく姿があった。ティオフの約2時間前のバックヤードの光景。赤と黒の戦闘服に身を包む前、舞台裏では地味で、小さな一歩を積み重ねてきた。

何度堕ちても、努力を惜しまないそういった姿は自ずと仲間を呼んだ。アプローチイップスに悩んだ時期には、試合会場の練習場で同僚選手たちに真剣にアドバイスをもらった。今ではフロリダ東海岸の拠点でラウンドをするときは、マキロイやリッキー・ファウラージャスティン・トーマスら若手選手たちがスパーリング相手だ。

2人の子どもは11歳(長女サム)と9歳(長男チャーリー)になった。自分の栄光時代の記憶がないふたりにとって「僕はYouTubeの中のゴルファーだ」と話してきたが、もう違う。「あの子たちも今は自分の父親が何をしているか理解していると思う。今回の優勝は子どもたちにとっても違う意味がある」。周囲のサポートと父としての威厳が、42歳のウッズをこれまでとは違う境地に導いた。

最終18番に集まった大ギャラリーはこの日、“暴挙”に出た。選手と観客を仕切るロープを次々とくぐり抜けていく。まるで1980年のバルタスロールのように。群衆はフェアウェイを歩くウッズを左右、後方から飲み込む大きな波になった。その間をかき分けて出てきたスーパースターに、歓喜の声が長く浴びせられた。(ジョージア州アトランタ/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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