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2018年 マスターズ
期間:04/05〜04/08 場所:オーガスタナショナルGC(ジョージア州)

マスターズの裏で 石川遼がローカル大会で見せる姿勢

数年前まで、石川遼が春に見る花はアザレアだった。世界最高のゴルフショー「マスターズ」に初めて出場したのが2009年。それから5年続けてオーガスタの地を踏んだ。13年大会を最後にその地から遠ざかり、昨秋には米ツアーから撤退。今年、マスターズと同じ週に石川が選んだのはツアー競技ではない、アマチュアも多く参加する地区オープンだった。

「千葉オープン」(太平洋クラブ成田コース)、「岐阜オープンクラシック」(各務原カントリー倶楽部)はそれぞれ地元新聞社が主催し、各県の複数のゴルフ団体が母体となる地区オープン。いずれの試合も予選、決勝合わせて2日間36ホールの短期決戦だ。千葉の試合で開幕前日にコース入りした石川は、散り際の桜の木を目にして「ここはまだ花が残ってますね」とぽつりと言った。

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マスターズの賞金総額は約10億円。一方の千葉オープンは1400万円。優勝賞金で比べると、約2億円と360万円という55.5倍の“格差”がある。ベストプレーヤーが集うオーガスタに対し、成田に来た今季の日本ツアーシード選手は7人。その他のプロは、レギュラーツアーはおろか下部ツアーの定着も果たせていない選手が多くを占める。また、出場全選手の4割は、大会が独自に開催した予選会や千葉県内の競技を上位通過したアマチュアだった。

オーガスタナショナルGCが期間中に集めるギャラリー数は各日約4万人、練習日を含めた1週間で30万人近くに達する。千葉では今年、前年比2.5倍増とはいえ、2日間で1419人だ。選手のプレーする領域とギャラリーの観戦エリアを隔てるロープも設けられず、親しみやすいアットホームな雰囲気に包まれた。

シード選手の石川は本来、この連戦をこなす必要はない。しかし、春先に自ら志願してフィールドに入った。選手会長に就任した今季、オープンウィークに地方を巡ってイベントを行うプランは確かに頭にあるが、今回の2連戦に関してはあくまで、いち選手として次週「東建ホームメイトカップ」(三重県/東建多度カントリークラブ・名古屋)から始まる国内での日本ツアーを見据えたものだった。

世界が注目するゴルフの祭典の裏で、石川は日本の小さなローカル大会で勝った。優勝争いの緊張感を味わいながら、「(同じ週に行われる)マスターズが気にならないゴルファーはいない」と正直だった。あの夢舞台を知っているから、なおさらだ。憧れのタイガー・ウッズは今年に入って復活の兆しを見せている。本当は早朝のテレビ放送を見たくて仕方がない。優勝した日の朝は「いろんな選手のスイングを真剣に見始めたら、自分のプレーに影響が出るかもしれない」と、普段通り試合に入るルーティンを“懸命に”守った。

海の向こうの大舞台に帰りたい気持ちは、もちろんある。ただ、26歳はそれが軽々しく口にできるものでないことも肌で感じている。「一年で“ただ”戻るだけでは成功ではない。米国で勝てる力をつけてから戻らないと前進とは言えない」と、今の自分とマスターズとの距離に真摯に向き合う。

確かに、戦う場所はこの数年でスケールダウンした。それでもひとつの「試合」に臨む石川の姿勢は変わらないように見えた。千葉オープン開幕前日、石川は練習ラウンドを行った後、都内にいたトレーナーのマッサージを受け、夜のうちに成田にとんぼ返りして翌朝のスタートに備えた。佐藤賢和キャディは会場のコースメモがないと知るや、インターネットで検索したゴルフ場の航空写真を参考に、近隣の100円ショップで買った文具を使って夜な夜なお手製のノートを作った。キャロウェイのスタッフは練習ラウンドから帯同し、スマートフォンに石川のショットの詳細を連日記録した。

米国で一緒に苦悩した“チーム石川”は地区オープンといえども、米ツアー参戦時と同じように全力で試合と向き合う。プライドなんてとっくの昔に捨てた。いつかもう一度、強くなってあの舞台に帰る―――その気持ちをスタッフも共有している。

「一打に臨む気持ちは(地区オープンも)ツアーの試合と同じ。気持ちが入っていない状態でミスをしたら、同じミスがツアーで出てしまいそう。それが僕はイヤだから」。プレーするところがどんなに小さかろうとも、石川はいずれ帰るべきオーガスタと、きっと同じ気持ちでボールを打つ。(千葉県成田市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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