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「スロープレーヤー」のレッテル ケビン・ナの苦悩と喧騒

フロリダ4連戦も今週の「アーノルド・パーマーインビテーショナル」が最終戦。4月の「マスターズ」開幕を3週間後に控え、メジャーシーズンが刻一刻と近づいている。しかし、そんな華やぐ雰囲気のフロリダスイング後半戦は、ある選手の周囲が騒がしい。30歳のケビン・ナ。本人にとっては不名誉な言われようだろうが、彼はツアーで現在最も“有名な”スロープレーヤーだ。

かねてから、ショット前のルーティンの多さによるプレーの遅さが指摘されていたケビンだが、騒動が再び巻き起こったのは前週の「バルスパー選手権」。最終組でプレーした3日目、競技委員による計測対象になったことに憤慨し、ラウンド後の会見でぶちまけた。

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「こんなのフェアじゃない」。この日は、前の組にトラブルがあり、待たされたホールも前半に多数あった。後半に1ホール以上空いてしまった時間帯があったが、結局は4時間以内でプレーを終えていた。最近ではスロープレーを改める努力もしてきた。だから言わずにはいられない。「僕には既にスタンプが押されてしまっている」と、1度スロープレーヤーとしての烙印を押されたことが、長く尾を引いていると主張した。

「たくさんの仲間たちが僕に『お前、本当に変わったな』って言ってくれている。ルイ・ウーストハイゼンも、彼のキャディも『君はもう遅くない』って。でも周りから見ている人たちは僕のプレーについての考え方を変えようとしない」

その日、同組だったロバート・ガリガスも彼を擁護した。しかしガリガスのバッグを担いでいたベテランキャディのブレント・ヘンリーが米メディアに「ケビン・ナと一緒にプレーしたくない。僕らは(計測後)走ってプレーしているみたいだった」とペースを乱されたと話したことも明らかになり、問題はなかなか鎮静化されていない。

そして迎えた今大会。2日目のプレー中、ケビンがカートに乗った競技委員に詰め寄るシーンがあった。再びスロープレーを指摘されたわけではない。彼が憤慨したのは別の理由。ギャラリーからスロープレーに関するヤジが飛んだからだった。その後、警備員を増強したが“犯人”は特定されなかったという。

しかしそんな喧騒の中、この3日目には心強い味方(?)が登場した。

13番ホールのプレー中、ケビンは2人のファンのもとに駆け寄り、ハグと握手を交わした。彼らの白いティシャツに書かれていたのは「Kevin Na, worth the wait!(待つだけの価値がある!)」というメッセージ。「クールだったね。グリーンに上がって行って、ちょっと振り返ったら見えて、笑っちゃったよ。嬉しいサポートだった」。この日は「71」と苦しんだが、彼にとっては少なからず安息の1日となったはずだ。

スロープレーに関しての議論は尽きない。1打にかける時間制限はあるが、それを取り締まるために目を光らせている競技委員が各ホールに常駐しているわけではない。前の組にトラブルがあった場合はどうするのか? 1打に数百万円、数千万円がかかるプロゴルフと、アマチュアの世界を一緒に論じるべきか? 1度“ブラックリスト”に載った選手だけが、苦しんでいないか?…と、今のところ指摘と主張の多い未成熟なルールではある。

ケビンはこの日のエピソードも「もう、おしまいにするよ」と胸にしまい込み、騒動が静まることを望んだ。少なくとも現在の彼にとっては、自分のプレースピードを改善することよりも、1度つけられたレッテルをはがす過程に苦労が絶えないようなのだ。(フロリダ州オーランド/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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