ミッション・ヒルズ、蘇る21年前の出来事
今年で38回目を迎える「クラフトナビスコ選手権」は、米国女子のメジャー競技の中では唯一、毎年同じコースで開催され、その舞台となるのはカリフォルニア州にあるミッション・ヒルズCC。その歴史ある練習場の脇に、綺麗な花に囲まれた石碑が立っている。
そこに刻まれているのは、ジョニー・レボルタという名前だ。1935年に全米プロを制してその年のPGAツアー賞金王に輝いたレボルタは、PGAで通算18勝、他も含めると生涯28勝を挙げた人物で、晩年はここミッション・ヒルズでコーチとして働き、1991年に79歳でこの世を去った。
その死の3年前、1988年の冬にひとりの少女が彼の元を訪れた。当時中学3年生だった彼女は、知人の紹介で、母と共にロサンゼルスからバスに乗ってミッション・ヒルズを目指したという。「アメリカは初めてだったし、不安だった」と振り返るが、「コースを見て、あまりの綺麗さにびっくりしました。芝から打てるし、1日中練習していましたね」と、初めて体験するアメリカのゴルフ環境に強烈な印象を受けたという。
レボルタには、「日本に帰っちゃダメだ、ここに残れ」と言われたが、「高校があるし…」と2週間の滞在で帰国。だが、進学の決まっていた大学付属の高校を断って、高校卒業後にアメリカへ行くと急遽、進路変更を決意した。
数年後、その夢を現実のものとし、米ツアーで2勝を挙げた福嶋晃子。「木が大きくなった位で、(当時と)変わってないですね」と、思い出の詰まったこの場所に再び帰ってきた。「カートで隣に座って、いつもポテトチップスを食べていて…」という、懐かしいレボルタの面影を胸に秘め、5年ぶりのメジャー大会に挑戦する。(編集部:今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka