バリーバーンにご注意を
今年の「全英女子オープン」が開催されているカーヌスティゴルフリンクスは、スコットランドの歴史あるパブリックリンクスコースとして、過去に幾たびものドラマの舞台となってきた。
なんといっても有名なのは、1999年の「全英オープン」。最終日最終ホールを3打リードして初メジャータイトルを目前にしたフランスのジャン・バンデベルデが、グリーン手前を流れるクリーク(バリーバーン)の餌食となり、勝利の女神にバチンと平手打ちを食らったかのように呆然と水の中にたたずむ姿は、ゴルフ史に残る「カーヌスティの悲劇」として今も語り継がれている。
また、さらに時代をさかのぼった1953年。カーヌスティで3度目の「全英オープン」開催となったこの年、偉大なるベン・ホーガンが初めてにして唯一の「全英オープン」出場を果たした。フェアウェイ中央に大きなバンカーが口を開け、左サイドはグリーンまで一直線にOBゾーンとなっているこのホールで、ホーガンはバンカー右サイドの安全なエリアを狙う他選手を尻目に、グリーンに対して良いアングルとなるOB杭とバンカーの間の狭いエリアを正確なショットで4日間狙い続けた。
ホーガンは、マスターズ、全米オープンに続いてこの年の全英オープンを制し、史上初のメジャー大会年間3冠を達成した。帰国後のニューヨークで凱旋パレードが行われたのは後日談だが、このホーガンのプレー以降、6番ホールには“Hogan’s Alley(ホーガンの小道)”という名称がつけられ、現在に至っている。
今年、初めて女子のメジャー大会が開催されているカーヌスティ。新たな歴史にどんな1ページが刻まれるのかは、まだ知る由もない。ところで、この日行われた大会初日。あの“バリーバーン”に不似合いなものが落っこちていた。
それは、ゴルフ場でよく見る電動カート。こちらの某国営テレビ局のクルーが乗っていたというものだが、目撃証言によると18番から16番方向にフェアウェイを横切ろうとしていた運転者が、17番ティに選手が居ないかよそ見をしていると、目の前に突然バリーバーンが現れた。とっさにカートを捨てて、運転者はコースに飛び降りて難を逃れたそうだが、カートはご覧の写真のようにその後も無残な姿をさらし続けた。
とはいえ、さすがにこれを“カーヌスティの悲劇”と認定するのは遠慮しておこう。(スコットランド・カーヌスティ/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka