リンクスコースでの戦い
午前スタートだった飯島茜、北田瑠依、上田桃子、横峯さくらの取材を済ませ、メディアセンターに戻ってくると、ロイヤルバークデイルの上空を覆った灰色の雲からザーッと細かい雨が落ちてきた。全英らしい天気と言ってしまえばそれまでだが、一度屋内に入ってしまうと、外に出るのが少し億劫になる天候だ。
メディアセンターのテント屋根を叩く雨音を聞きながら原稿の準備をしていると、午後スタートの宮里藍、宮里美香、有村智恵らが後半に入ってきた。ニット帽をかぶり、カッパを着て、折り畳み傘を持って出陣の決意をする。最初に向かったのは14番パー3。宮里美香のティショットが、ちょうどグリーン右手前のバンカーに捕まっていた。
あご近くに止まった球を出そうとした宮里美香だが、一度目は壁に当たり自分の足場に戻ってしまう。3打目はピンを狙わずにフェアウェイ方向へと戻し、4オン2パットのトリプルボギー。この時点で通算11オーバーとなり、予選通過は絶望的になってしまった。
過酷な全英。そんな事を思いながら2組後の宮里藍を待っていると、その宮里はこの条件の中、13番までになんと一つスコアを伸ばして戻ってきた。14番は2パットのパー。迎えた15番、フェアウェイからの第2打は「グリップが雨で滑った」と右サイドのブッシュに突っ込みアンプレヤブルとしてしまう。だが、そこからの4打目をピンそば3mにつけて何事も無かったかのようなパーセーブ。折れない気持ち、集中力の高さが驚異的だ。
ふと隣の17番に目をやると、ポーラ・クリーマーがティショットを左サイドの小高いマウンドに打ち込んでいた。左足上がりで、球を覗き込むように見ているクリーマーを見ると、ライは相当悪そうだ。ドスンという鈍い音と共に放ったショットは、球は前方へ出たものの、クラブは地面に突き刺さった状態。手術をしたばかりの左手親指は「肩まで痛かった」とクリーマー。「Damn!」と叫ぶと何度も手首を振り、最後はフェアウェイにうずくまって痛みを必死に堪えていた。一瞬目を手で拭い、泣いているような素振りも見せる。続くフェアウェイからの3打目は、ウッドを持ったものの痛みを警戒してかトップしてしまった。
右を見ても左を見ても、皆が懸命に戦っている。このだだっ広い草と土ばかりのリンクスコースが、さながら合戦場のように感じられ、緊張感で背筋が知らずに伸びるのを感じていた。(編集部:今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka