2021年 ロッテ選手権

「ゴルフは難しい」 渋野日向子が米国で追い求める理想

2021/04/19 16:05
渋野日向子は米国で戦いながら理想のスイングを追い求めている※大会初日(撮影/田邉安啓)

◇米国女子◇ロッテ選手権 最終日(17日)◇カポレイGC (ハワイ州)◇6563yd(パー72)

ハワイの風にかき消されてしまいそうな渋野日向子のつぶやきだった。「きょうの感じだと、もう一回やり直しかな」。独特のワードセンスでインパクトを残すインタビューの自虐節とは対照的。素朴な言葉に本音がにじんだ。

今季メジャー初戦「ANAインスピレーション」から始まった海外転戦。昨季までに比べて明らかにコンパクトになったトップから放たれるティショットは安定していた。予選通過に1打足りなかった2日間でフェアウェイを外したのは、各日2ホールずつの合計4ホールだけだった。

オープンウィークを挟んで迎えた「ロッテ選手権」でも同スタッツは高水準をキープ。予選ラウンド2日間は85.71%、3日目には92.85%とさらに数字を上げたが、最終日に一変した。出だし1番で左の池に打ち込むと、その後もフィニッシュを崩して左へのミスが続き、比較的ワイドなフェアウェイにボールを置けたのは8ホールにとどまった。「こんなに曲げたのは久しぶり。切り返しが早くなっていた」と息をついた。

昨年限りで指導を受けていた青木翔コーチのもとを離れ、取り組んできたスイング改造。「トップまでのスイングは固まってきた」と話し、次なるステップに進むことを考えていた。「フォローを低く出して、左に振り抜きたい。それができれば、球筋的に安定感も出るし、飛距離も出るし、高さも出る」

フォロースルーへの意識が大きくなれば、トップへの意識は必然的に小さくなる。地道に段階を踏んできたつもりでも、「あれだけドライバーが良かったのに、一日で変わっちゃう。できていたことが、できなくなる。2つのことを意識できるほど、私は器用じゃない。ゴルフは難しい!」。明るいトーンにもどかしさをしのばせた。

難しいからこそ、ゴルフを追究する楽しさを感じている※大会最終日(撮影/田邉安啓)

スイング面だけでなく、コースとの向き合い方を含めた新たなトライ。ゴルフのことを考える時間は「全然、増えました」。試合中、もともとプレーがかなり早かった渋野が1打にかける時間は長くなった。「自分で分かります。(落としどころとか)普通考えないといけないようなことを考えていなかったから、あれだけパパパッて(時間をかけずに)打てたりした」。最近はコースを離れてからも、ふとした瞬間にシャドースイングで体の動きをチェックしている自分に気付いて驚いたという。「いままでなら、なかったこと。いつも頭の片隅にあるんですよね」

日本で4連戦を組み、間髪入れずに渡米。「ロッテ選手権」を終えるまでの3週間、移動日を除けばゴルフ場でクラブを握らなかった日はない。「米国にいるうちにメジャーもあと2つ。どこかに照準を合わせるという感覚には今、なれないですね」と話すのも、先を見ることで目の前の課題に対するフォーカスがぼやけてほしくないから。

「楽しいですよ。ゴルフを勉強する、追究する楽しさ。追究しすぎて(頭でっかち)もダメなのかなと思うけど、タンクが満タンになるまでは…」。腰を据えて謙虚に、愚直に学びながら、一歩ずつでも前へ。その足取りに迷いはない。(ハワイ州カポレイ/亀山泰宏)

■ 亀山泰宏(かめやまやすひろ) プロフィール

1987年、静岡県生まれ。スポーツ新聞社を経て2019年にGDO入社。高校時代にチームが甲子園に出場したときはメンバー外で記録員。当時、相手投手の攻略法を選手に授けたという身に覚えのないエピソードで取材を受け、記事になったことがある。

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