米国女子ツアー

18番ホール、「9」のスコアが意味すること

2007/01/21 00:00
18番、セカンドショットを放つ上田桃子

W杯女子ゴルフ2日目。チーム・ジャパンは最終18番で「9」という大叩きをしてしまう。このホールは、パー5ながら2オン可能なバーディホール。チーム・ジャパンは、ここの2打目で上田桃子にグリーンを狙わせる為に、18番から遡ってフォアサム方式の順番を組んでいた。

だが、その大事なティショットを諸見里しのぶが右に大きく吹かして林の中に入れてしまう。セカンド地点に来た上田は、まず自分がそこから打たなくてはいけないことに腹を立てた。「あそこに打つ、しのぶもいけない・・」。だが、その時点でまだ上田には二つの選択肢が残されていた。一つは前方の枝の下にある1m程の空間を通してホールに出来るだけ近づけること。うまく行けば、3打目でバーディチャンスにつけられる可能性は高くなる。だが、もし枝に当たって下に落ちると、ボギーやダボにつながる危険なショットだ。もうひとつは、より広い左サイドからフェアウェイに戻すこと。ショットの難易度は低いが、3打目の距離が長くなりパーオンの確率は低くなる。

時間を掛けて状況を観察した上田は、「腹決めて打ちますよ」。と前方を向いて構えようとした。その時、江連氏から声が掛かる。「でもよ、左に出してパー狙いっていうのもあるからな」。水を差された上田は、「もーっ」と一瞬嫌そうな顔を見せた。そして、「じゃあ、そっちに打ちますよ。しのぶ、飛びすぎたらごめんね」。そう言って左に放ったショットは、予告どおり、フェアウェイで止まらずに反対側のラフまで達した。その後は、諸見里、上田と連続で池に入れ、結局7オン2パットの「9」。

上田は記者に囲まれてこう言った。「あれは、どこに出しても一緒でした。もし低く打てたとしても、木に当たって落ちることもあるし、(高い)確率をとってああいう結果になっただけで・・」。

数時間後、人影の少なくなった練習場で江連氏やキャディらと再びその場面の話になった。「でもあの時、私が打とうとしたのを止めたじゃないですか」。上田はそう言った。だがそれ以上、誰かを責める言葉は出なかった。それはそうだろう。自分のショットは自分で決断するのがプロなのだから。「真剣にやらないといけない」、「ベストなプレーを見せたい」、常々言葉に出してきた上田だが、あの1打は本当にベストショットだったのか、疑問が残った。

ホールアウト後、テレビカメラの前に現れても涙を止められなかった諸見里とは対照的に、上田はテレビのインタビューに答え、ギャラリーにサインをしてから、チームスタッフの女性の元で1人静かに嗚咽を漏らした。彼女には、きっとすべてが分かっていたのだろう。自分の甘えや弱さについて。そして、自分が望んでいた結果が得られなかった不甲斐なさに、自分の為に涙を流したのに違いない。

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka