朴仁妃はキャリアグランドスラムを達成しているのかという論争
◇海外女子メジャー◇エビアン選手権 3日目(27日)◇エビアンリゾートGC(フランス)◇6523yd(パー71)
女子ゴルフ界ではメジャー大会を生涯で全制覇するキャリアグランドスラムをめぐり、論争が起きたことがある。31歳の朴仁妃(韓国)が、最後にメジャー優勝した2015年8月「全英女子オープン」直後のことだ。
朴は同大会で「全米女子オープン」(2008年、13年)、「ANAインスピレーション」(13年)、「全米女子プロ選手権」(13年、15年)に続く4つ目のメジャータイトルを獲得した。しかし、女子ツアーは現在、男子ツアーより一つ多い年間5試合のメジャー大会を組む。「エビアン選手権」が2013年にメジャー昇格を果たしたからだ。
朴は「エビアン選手権」を2012年に制しており、トロフィーには歴代優勝者として名前が彫られている。ただ、当時はメジャーではなく、いわゆる“平場”の試合だった。すでに優勝していた大会のメジャー昇格をきっかけに、朴は本当にキャリアグランドスラムの称号を得るのか、という議論が業界内で巻き起こった。
LPGA(米国女子プロゴルフ協会)は当時、朴のキャリアグランドスラムを認め、改めて「エビアン選手権」を制した場合は“スーパーキャリアグランドスラム”とするという認識を示した。しかし、米ゴルフチャンネルやAP通信が、この見解を非難。ゴルフチャンネルは「エビアン選手権がメジャーに昇格した以上、5つの全メジャーを制した選手にキャリアグランドスラムの称号を与えるべきだ」と主張した。論争は過熱し、ニューヨークタイムズ電子版は「このややこしい問題を解決するには、朴がもう一度エビアンで優勝するしかない」と報じた。
4年の月日が流れ、かつてほど議論は過熱していないが、今年も報道陣から「エビアン以外のメジャーは勝った。ここでの勝利が必要か」と朴への質問が飛んだ。首位と4打差で迎える最終日を前に「メジャーになる前だけど、エビアン選手権を勝ったことで私は勝利を積み重ねた。私のすべての歴史は、ここから始まった」と述べた。“スーパーキャリアグランドスラム”を達成して論争に終止符を打てば、それもまた彼女の偉大な歴史の一部となる。(フランス・エビアン/林洋平)