残念ながら2日目に崩れて予選は通らなかったが、永井花奈のプレーは世代の勢いを予感させた

今季8戦目の国内女子ツアー「フジサンケイレディスクラシック」は、直前に明らかにされた横峯さくらの入籍ニュースで一色となった中で開幕。残念ながら横峯本人は予選落ちしたが、予選ラウンド中はコース内に「さくらちゃん、おめでとう！」とギャラリーからの祝福も響き、改めて女子ゴルフ人気の一側面を垣間見る大会となった。

プレーの方では、その初日、6バーディ2ボギーの4アンダーで首位と1打差の2位タイにつけた16歳のアマチュア永井花奈の存在感が目を引いた。前週に開催された「KKT杯バンテリンレディース」で、15歳のアマチュア・勝みなみがツアー史上最年少優勝の快挙を成し遂げたばかりだったからだ。

＜＜　下に続く　＞＞

勝の15歳293日での優勝は、2012年「サントリーレディスオープン」でキム・ヒョージュ（韓国）が記録した16歳332日を更新。というより、2003年「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」で宮里藍が記録した日本女子最年少の18歳101日を大幅に上回ったという点で印象的な優勝だった。横峯の結婚について宮里は「やっぱり私たちもそういう年齢になったんだなと実感も湧いた」と話したが、あの優勝はもう10年以上も前の話。当時、勝は5歳、永井は6歳だった。

永井は、同じアマチュアである勝とジュニア時代から合宿をともにするなど、研鑽しあう良きライバルであり親友の間柄だという。勝の快挙について祝福すると同時に、「同じ舞台で戦っている私にも（優勝の可能性が）あるかも知れない」と、控えめながらも確かにそう話し、少なからぬ刺激を受けていることを明らかにした。目の光や言葉の響きに、心なしかリアリティが宿っていた。

宮里が「10歳からの友達」と話す横峯さくらとの関係が、重なって見える。一時代を築く中心選手には必ずライバルが存在し、誰かかが大きな壁を突破すると、周囲はその刺激を少なからず受け、本人たちも気づかないうちにレベルアップを果たす。その繰り返しが、1学年下の諸見里しのぶ、上田桃子あたりまでを含む“藍世代”と呼ばれるような群を抜いた特定世代の飛躍につながっていたように思えてならないからだ。

史上最年少優勝の15歳・勝みなみの存在が、同世代を飛躍的にレベルアップさせる

国内男子ツアー「マンシングウェアオープンKSBカップ」に、当時15歳で出場した石川遼がツアー初出場で史上最年少優勝を達成して世間を賑わせたのは今から7年前の2007年。それから遅れること3年後の2010年、石川と同級の松山英樹が「アジアパシフィックアマチュア選手権」で優勝を飾り、翌2011年の「マスターズ」ではローアマチュアとなり日本人初の表彰式に臨んだ。今年はこの2人と同学年の大堀裕次郎が国内男子開幕戦で2日目まで首位を走り注目を集めた。

競技の壁を越えれば、プロ野球の「松坂（大輔）世代」「マーくん（田中将大）世代」、日本サッカー代表の「黄金世代」など、こうした例は枚挙に暇ない。勝みなみ自身は優勝する前から、先週の「スウィンギングスカートLPGAクラシック」でプロ転向後初の米ツアー制覇を果たした17歳のリディア・コー（ニュージーランド）を意識した発言をしており、「○○世代」という考え方もいよいよ国境を越えている可能性はある。

いずれにせよ、2020年に東京五輪も控えた日本ゴルフ界の関心は、勝の優勝が新たな“みなみ世代”を築くきっかけとなるかどうかへ、向くことになるだろう。

藍世代が築いた国内女子ゴルフの人気は、試合数が増加の一途をたどるなど今のところ衰えを知らないものの、それでもトーナメントTV中継の平均視聴率が10％を超えることはなくなった。日本女子プロゴルフ協会によると、勝が優勝した「KKT杯バンテリン」は最終日の視聴率が今季最高で6.2％を記録。それ以外は5％台で推移している現状がある。

まさに10年一区切りと言えるような新星の誕生。勝と永井は今週の「サイバーエージェント レディスゴルフトーナメント」にアマチュアとして再び出場する。ひょっとすると時代の潮目に立っているのかもしれない、と川奈の海を見ながらふと思った。