古閑美保、涙よりも笑顔の似合う引退試合
多くの人も同じではないかと推測するが、まだ実感が湧かないというのが本心だ。引退を決意した古閑美保(29歳)のラストマッチとなった「大王製紙エリエールレディス」。途中、プロになって初めてというシャンクが出たり、ショットがぶれたりと、全盛期と比べるとその精度は確かに落ちたが、大勢のギャラリーを引き連れて11位タイというエンディングは、涙よりも、笑顔が印象に残る一週間だった。
“優勝を狙えなくなった”という理由で余力を残してツアーを去る。今週は古閑だけでなく、米山みどり(35歳)もプロデビューの時から決めていたという自分のライン・・・35歳を区切りとして、潔く戦いの場を後にした。シード権を放棄しての引退というのは、04年末の村口史子以来の出来事だ。ただし、村口の場合は古閑や米山のように引退を宣言してラストマッチを戦ったわけではない。シーズンが終わり、静かに書面をもって引退を通達した。
18番、最後のパットを沈めた古閑美保は、同組の馬場ゆかり、井芹美保子、キャディの吉田万里子さんらと抱き合った後、握っていたボールをギャラリーの中に投げ入れた。「家族のためにゴルフも今までやってきたし、やっぱりファンあってのプロゴルファー人生だと思ったので」。その場で決めたという古閑の行動は、日頃の思いから出た素直なものだった。
奔放な発言や行動で、時に世間やメディアから批判を浴びることもあった古閑だが、女子ツアーを盛り上げた功労者という意味では、その存在はとてつもなく大きかった。2010年終盤からけがの影響で棄権、予選落ちが続き、シーズンオフには熱愛報道という本業以外でマスコミを賑(にぎ)わせていた。迎えた2011年、復帰戦となった地元熊本での「西陣レディス」。初日「75」、2日目「78」とスコアを伸ばせず予選落ちとなった古閑だが、集まった報道陣を前に「こんな私の話を聞いてくれて、どうもありがとうございます」とぺこりと頭を下げる姿を見ると、やっぱり応援したくなってしまうのだ。
あまり寂しさがこみ上げてこないのは、すぐにまた会えるという気がするからだろうか。今後はスポーツキャスターやゴルフの解説などの仕事をする予定だという古閑。これからも、その笑顔でゴルフ界を大いに盛り上げてくれるに違いない。(香川県三豊市/今岡涼太)