「もう勝てないんじゃないか・・・」上田桃子が乗り越えた壁
「もうゴルフをやめたい・・・」。上田桃子がそんな弱音をこぼしたのは、「マンシングウェアレディース東海クラシック」「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」と、得意コースで2週連続の予選落ちを喫した今年9月のことだったという。
それを聞いた母・八重子さん。「やめたければやめてもいいけど、つま先で立っているだけでも、逃げないことは大事だよ」。じゃあ、つま先だけでも立っていよう。不調の底で、信頼する母の言葉が胸に染みた。
08年から米ツアーに参戦している上田だが、日本の賞金女王という実績を持ってしても、米ツアーでの優勝はつかめそうでつかめない。09年、10年、そして11年。4年の月日が流れ、「もう勝てないんじゃないか」という恐怖心にも襲われていた。
孤独なアメリカでは、共に戦う宮里藍、宮里美香の存在が大きかった。「とにかく桃子の好きなようにやればいいよ。誰かがダメっていっても、自分が決めたことが正しいんだから」と藍。優勝が決まった瞬間、グリーンサイドに藍と美香の顔を見つけ、「ずっと笑顔でいるのを見ていただけで涙が出ました」という美香の言葉を聞くと、上田も涙を堪えることができなかった。
「今週は格好つけずにやれました。自分に一番足りないのはそこだと思う。これまでは綺麗なゴルフをしようと思い過ぎていて・・・。今週はミスも多い方だったけど、考え方一つでミスをミスと受け入れなくて済むんだなって思いましたね」。
優勝スピーチでは、いつも帯同してくれているチーム桃子のメンバーや、キャディ、そしてこの日も18ホールずっと声援を送ってくれたギャラリーへの感謝の言葉があふれた。4年前に米ツアーへの階段を駆け上がった今大会で、再び自らの新しい1ページを切り開いた上田。最後まで見せ続けた桃子スマイルこそ、そのシンボルだ。(三重県志摩市/今岡涼太)