“デジタルコミュニケーション改革”で目指す女子ツアーのファンづくり
◇国内女子◇樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント 最終日(29日)◇武蔵丘GC(埼玉)◇6650yd(パー72)◇曇り時々晴れ(観衆5629人)
会場に足を運んだことがあるファンは「JLPGA OFFICIAL SNS」と書かれたビブスのスタッフを見かけたことがあるかもしれない。
日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は2021年後半からSNSを通じたファンづくりを本格化させた。フォロワーはInstagramを中心とした5アカウントで計50万人を突破した。スタート時からは倍増だ。
事業戦略部・事業戦略グループの小川智史氏は2年をかけて取り組んできた“デジタルコミュニケーション改革”について「ブランディング、ファンの認知拡大、エンゲージメントの向上。既存のファンにより好きになってもらうこと」と説明した。
メインとなるInstagramのアカウントは9月に25万人を突破した。前週「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」で引退したイ・ボミ(韓国)のお別れ動画は78万回以上再生された。
「試合だけでは伝わらない部分を伝えていければ。ファンとの双方向のやり取りを強化している」
2022年から放映権がJLPGAに帰属し、スーパープレーや珍プレーなど試合中の映像を自由に使用できるようになったことも大きい。また、現地スタッフが試合前の練習映像や試合後のインタビューなどを撮影。リモートスタッフらの編集、チェックを経てInstagram、X(旧Twitter)、YouTubeなどに投稿される。
「この1年で選手の反応も増えてきた。『Instagram面白くなったね』と言われるようになった。選手にも、登場するとメリットがあると分かってくれると協力してもらいやすい」
米PGAツアーのInstagramフォロワーは438万人、米女子ツアーは同51万人と差はあるが、いたずらにフォロワー数だけを追っているわけではない。
「フォロワー数は水物。結果的についてくることもあるが、一つの投稿で15万人に見られた投稿をいくつ作れるかとか、独自の目標を設定している」。試合だけでは見られない選手の意外な一面や感動的なシーンは特に好評だ。
「NBA(米プロバスケットボール)などを参考にしている。4大スポーツでも一番先進的な投稿、ブランディングを各チームがやっている」
3月には下部ステップアップツアーのInstagramアカウントも始まった。「質のコントロールが一番大変です。圧倒的にリソースが足りない」。今大会の最終日には5629人が来場した。そのうちの少なくない人が“デジタルコミュニケーション改革”によって足を運んだのかもしれない。(埼玉県飯能市/玉木充)
■ 玉木充(たまきみつる) プロフィール
1980年大阪生まれ。スポーツ紙で野球、サッカー、大相撲、ボクシングなどを取材し、2017年GDO入社。主に国内女子ツアーを担当。得意クラブはパター。コースで動物を見つけるのが楽しみ。