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YouTube生中継は女子ゴルフの「大きなうねり」となるか?

2020/06/30 19:35

◇国内女子◇アース・モンダミンカップ◇カメリアヒルズCC(千葉県)◇6622yd(パー72)

約4カ月遅れで開幕を迎えた国内女子ゴルフ。23年ぶりの月曜決戦はプレーオフにもつれ込み、渡邉彩香の5年ぶり復活優勝という劇的な幕切れとなった。無観客で行われた白熱の試合展開をゴルフファンが目の当たりにしたのは、慣れ親しんだテレビ放送ではなく、インターネットのYouTube生中継を通じてだった。

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全4ラウンドを第1組スタートから最終組ホールアウトまで放映。悪天候で最終ラウンドを見送った28日(日)を含む5日間の総視聴回数は677万3987回に達した。決着の瞬間は平日の月曜午後だったにもかかわらず、20万人超が視聴していたとみられる。

第3ラウンドまでは4チャンネル(試合映像、注目ホール、ショートホール、選手インタビュー)で放送。持ち越しで1チャンネルとなった最終ラウンドでも、国内ツアーのほとんどの試合が録画中継で放送してきた中、どちらかが勝つか分からないプレーオフの緊張感をリアルタイムで伝えた。

大会を主催したアース製薬の大塚達也会長は「予想以上の反響。新しい見方を提案できた。(来年以降もネット中継を)継続したい。カメラを増やすことも検討したい」と手応えをにじませ、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の小林浩美会長も「女子ツアーに大きなうねりが来た」と異例の試みへの期待を隠さなかった。

■選手もYouTube放送を活用

映像はYouTubeに残るため、生中継後も視聴できる。鈴木愛古江彩佳らは、これを自らのスイングの確認や修正のために生かしたという。普段の練習と緊張感のある試合とでは、スイング軌道に微妙な違いが生じることがある。練習場で録画したものではなく、試合本番の映像をスマートフォンでどこでも見られるのは便利なようだ。

一方、映像が生配信されることへの懸念から、ラウンド中の会話には気を配ったという声も。無観客試合だったこともあり、渋野日向子は開幕前に「思った以上に自分の声がカメラのマイクに聞こえちゃうと思う。とりあえず言葉には気をつけなきゃなと思っています」と冗談交じりに笑わせていた。

あるキャディは「みんな、会話には少し気をつけたと思いますよ」と証言する。「やりにくさがあったわけではないけど、試合中は選手との関係性の中で話をする。ただ、それがすべて音声として拾われちゃう可能性もあるかなと(多くの選手やキャディが)思っていただろう」と、テレビ中継とは異なる対応の必要性を感じていた。

■ネットに馴染みない世代も

インターネット放送の視聴方法に関する問い合わせも相次いだ。長年プロゴルフに携わる大会運営スタッフは「ゴルフファンにはそういう層がいることも、忘れてはいけないと思う」と指摘した。

テレビは限られたチャンネルを選択し、画面を合わせれば目的の映像が流れるが、インターネットは自ら検索してたどり着かないといけない。「女子ゴルフの場合、潜在的な視聴率は5%くらいを想定している。この5%の中にはインターネットに馴染みのない世代も多く含まれている」と強調する。

視聴率5%は、世帯数で換算すると300万近くになる。ある選手のスポンサー企業幹部は「選手の露出度により契約金が変動するのがスポンサー契約。一日中放送するネットと数時間のテレビで一概に同じ意味を持つとは言えないが、試合やそれ以外(の番組出演)も含めテレビ視聴率の影響は非常に大きいとみている」と打ち明けた。

■大会運営はより柔軟に

テレビ放送がなかったことで大会運営の柔軟性は増した。悪天候予報の28日(日)は前日時点で、第1組の午前10時ティオフを決定。さらに、天候回復の見通しが立たなくなった28日午前9時には最終ラウンドの翌日順延を早々に決めた。

運営スタッフの1人は最終日にテレビ放送枠があるとティオフ時間の変更には手間を要するとし、「順延はテレビ放送の有無とは関係はないが、調整がスムーズに行えた部分はある」と話した。

インターネット中継だった今大会の試合映像の「制作・著作」に関する権利は、アース製薬が持つ。大塚会長は「(テレビ放送の)制作費を払っても、著作権はテレビ局にある。それよりネットの方が安く、CMを入れずに新たな視聴スタイルを提供できた」と主催者としてのメリットにも言及した。

時代の流れに沿うように生まれた今回の視聴スタイルだが、ほかの大会に普及するかどうかはさらなる議論も予想される。JLPGAはテレビ放送とインターネット放送の棲み分けを図りたい考えだが、プロゴルフを黎明期から支えてきたテレビ局は「一方的な要求をぶつけられている」とし、放映権の一括管理を主張するJLPGAへの不信感や戸惑いは根強い。ファンや選手を第一に考えた着地点は見いだせるのだろうか?異例づくしの開幕戦を成功裏に終えたいま、突き付けられている課題は決して小さくない。(編集部・林洋平)

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