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鈴木愛と渋野日向子 長時間練習を支える共通のキーワード

日が傾きかけた宮崎CCの練習グリーン。鈴木愛は今年も最後の一人になった。耳にイヤホンをつけ、納得するまで終わらない。寒空の下、練習グリーンを独占する姿は毎年目にする光景だが、今年は少し違った。鈴木が家族と関係者だけが残るクラブハウスに引き揚げる数分前まで渋野日向子もパター練習をしていた。

2人に会話はなかった。周囲の雑音を遮断するように集中する鈴木。陣営と話しながらスイッチを切り替える渋野。対照的な2人をオレンジ色の夕日が映し出す。ツアー会場で、この2人ほど練習する選手は見当たらない。練習は裏切らない。鈴木が賞金女王に輝き、渋野が2位という結果が示したといえる。果たして2人の練習量を支えるものは何なのだろうか。

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素直さ―。練習嫌いだった鈴木が衝撃を受けたのはプロ1年目、2013年のオフ。先輩プロと行った米アリゾナ州での合宿だ。当時は「練習時間と携帯を見る時間が同じくらい」だった。同年は出場4試合で3度の予選落ち。合宿先でラウンド後にホテルに帰宅しようとすると、契約先のピンの担当者に言われた。「愛ちゃん、さすがに甘すぎる」。先輩プロは熱心に練習していた。ドキッとし、返す言葉がなかったという。帰国した鈴木は決意を新たにした。

くぎを刺したその担当者は、「すごく素直な選手。練習量について言ったのは、その一回だけです。それからずっと練習してきているんです」と明かす。周囲から見ても目の色が変わったという。

衝撃―。渋野はその鈴木の姿に刺激を受けた。飛躍の年のターニングポイントのひとつに挙げる、3月の「PRGRレディスカップ」。同組で優勝争いを演じてパット巧者の技に大差を感じた。「レベルが全然違う」。自身に課した厳しいノルマはいまでこそ30分で終わらせるが、当初は3時間かかった。

9月の「スタンレーレディス」で、プロアマを終えた渋野がバンカー練習場にいた。ピン付近に置いたボール籠に直接入れるまで終わらない。「コーチにバンカー練習しなさいって言われて」。疑うことなく素直に従っている。「今の私の課題なんですよ。腰がいてーよー」と冗談めかし、同じ位置から2時間動かなかった。表彰式開始のアナウンスが鳴り、「終わらなかった」と苦笑したが、式を終えるとすぐに練習場へと戻り、携帯電話の灯りだけを頼りにパット練習に励んでいた。

恐怖心―。鈴木は10月に左手親指により3試合欠場した。復帰時に「選手生命にもかかわると思ったから、思い切って休んだ」と明かしたが、練習に時間を割けない日々は恐怖心に襲われたという。「練習できないと不安がある。今は昔よりも休むことの重要性も理解できている。ただ不安を拭うためには練習しかない」。下手な結果は残せない。追われる立場として注目される第一人者ゆえの悩みだろう。海外メジャー覇者となった渋野にも今、それと似たような感情があるという。

鈴木が初めて女王になった2年前。最終戦でも長時間練習グリーンに一人だけ残っていた。ホテルに戻る身支度をしているときに鈴木に「最終戦でも一番練習している」と聞くと、こう言った。「人のことは…どうだろう。でも練習しないと上手くはならない。私は私でやるしかないです」

今年、宮崎CCの練習グリーンを照らした夕日は、鈴木が渋野の出現を自覚し、渋野が鈴木の背中をひとつの目標に走り続けた成長を映し出していた。(編集部・林洋平)

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