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遅れてきた賞金王・藤田寛之 中年の星から日本ツアーの星へ

国内男子ツアー今季最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」最終日。東京よみうりCCの18番グリーンに上がってきた藤田寛之は、360度から響く万雷の拍手で迎えられた。大会史上初の3連覇、そして賞金王戴冠。「未知の世界」と言い続けて来た景色が、確かにここにあった。

大会レコードに並ぶ「61」を叩き出した初日から、後続を振り返ることなくゴールテープを切った。3日目までに後続に6打差をつける独走。最終日も前半のうちに3つスコアを伸ばして勝負を決めた。3連覇、マネーキング、そして最大の目標である年度末の世界ランキング50位以内の確保。圧倒的な強さを示して、すべてを手に入れた。

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近年の日本ツアーで旋風を巻き起こすアラフォー世代を牽引する存在として、いつしか“中年の星”のネーミングが定着した藤田。通算15勝のうち、実に9勝が40代に突入してからのもの。43歳にして初めて賞金王の座についた選手はツアー史上最年長だ(これまでは93年に39歳で初戴冠の飯合肇、最年長賞金王記録は98年の尾崎将司で51歳)。

専大を卒業後、92年にプロ転向。97年の「サントリーオープン」で初優勝を飾った。だが、日本ゴルフツアー機構(JGTO)のプロフィール欄にも「学生時代は同学年の丸山茂樹らの影に隠れた存在」とあるように、1つ年上(学年は2つ)の伊澤利光、そして丸山は「雲の上、手の届かない存在」だった。95年から師匠となった芹澤信雄も「体も小さく、年間1勝して賞金ランク30位以内で、毎年日本シリーズに出るくらいの選手にはなれるかもしれない」と踏む程度だった。

伊澤、丸山が築いた黄金時代。彼らの活躍の間隙を縫うように、2004年までに4勝をあげたが“別格”という位置づけは変わらない。同年7月、米国男子ツアー「ジョンディアクラシック」にスポット参戦した際、既に主戦場を移した丸山と練習ラウンドをともにした。高レベルのセッティングの中で、軽く6アンダー、7アンダーというスコアを作る同級生。長年キャディを務める梅原敦さんも「手の届かない存在」という思いは同じだった。

だが普段から行動をともにする宮本勝昌は兄弟子を「頑固。スイングも性格も軸がぶれない。自分の信念、ビジョンが明確にある。昔も今も何も変わらない。結果が出ているか、出ていなかったかだけの違い」と言う。近年、藤田は所属する葛城GCにトレーニングルームを設けた。平均飛距離が280ヤードに届いたのは、41歳となった2010年シーズンが初めて。昨年、そして今年もその数字を維持している。道具の進化とともに、肉体にもムチを振るってきた。家庭では2人の息子の世話も夫人にまかせっきり。「仕事と家庭は両立できない、というのが持論。無理を言っていると思うし、我慢してくれている奥さんに感謝したい。今どきこんな家庭は成立しない」。しかし、すべての力をゴルフに注ぐ、その生き方には誇りもある。

この冬、伊澤と丸山は長年守ってきたシード権を喪失した。来季はキャリアで一度だけ使える生涯獲得賞金25位以内の資格で出場権を手にできるが、故障などから這い上がるための再起が期待される。

藤田は最初から偉大な同世代のプレーヤーを目標としてきたわけではない。「20代の時はシード権だとか、ただ優勝が目標だった。今のことなんかまったく想像できなかった。その時々でチャンスをもらわないと、自分は動かないのかもしれない。10段先のものを想像するのではなく、一歩一歩、上ることによって進化しているのかも。“超現実派”で妄想が苦手なんです」。

だが、その姿勢は雲の上の存在だった彼らにも、確かに伝わっている。「藤田君の活躍は刺激になる」、丸山がそんな風に言ったのは今年の秋のこと。青木功はこの日、「あいつもやっと追われる立場になった」と話した。藤田寛之は、年を重ねることなど目もくれず、向上心尽きないままに日本ツアーの星になった。今度は、光を照らす番だ。(東京都稲城市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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