藤田寛之が石川遼を越えた日
国内男子ツアーで43歳にして初の賞金王獲得間近となった藤田寛之。そして大会2日目にスコアを伸ばし3位タイに浮上した石川遼がそろって最終組でラウンドすることもあり、「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の3日目は多くのギャラリーが東京よみうりCCに駆けつけた。
最終組のティオフ順は石川、ハン・リー(アメリカ)、藤田。石川の名前が読み上げられると、満席となったギャラリースタンドはもちろん、コースのロープ際に並んだ多くのファンから歓声があがった。そして、トーナメントリーダーとして最後にティグラウンドに立った藤田の名前が呼ばれた時、石川の時よりも多くの歓声が会場内に響いた。
試合をリードする選手を称えるのはファン心理として当然のことだが、今季の藤田の活躍を考えると、ついに日本国内に石川を越える声援をもらう選手が現れたと感じざるを得なかった。
ラウンドを終えた石川の記者会見中、「藤田のゴルフをどう思う?」「藤田のどこが凄い?」など半分以上が石川のゴルフに関すること以外ばかりとなってしまった。会見場を去る石川が小声で「藤田さんのことしか言わなかった」と苦笑いしたが、石川としてもこれまでに感じたこともないような違和感を持った。
自分以外の選手について語らされることは、決して面白いことではないが、石川は嫌な顔もみせずに「僕なんかが藤田さんのゴルフについて言うのは恐れ多いが、一番は妥協しないところだと思います。練習でも目指しているラインが高いという感じがします」と、同じ土俵で戦う選手ながら、素直に藤田の姿勢を評した。
そして、最終日に谷口徹とともに首位の藤田を追いかけて最終組でラウンドすることになったキム・キョンテ(韓国)は、谷口徹を含め「40代の彼ら2人のゴルフは素晴らしい」と評価した後で「明日は藤田さんが、どれほど強いのかを見てみたい」とラウンドを楽しみにしていると話す。
当の藤田も「周囲から賞金王を獲れとか、強いとか言われてきたので、自覚というか自然と自分自身にしみこんできた感じはありますね。今週も初日から首位に立っちゃって、日に日に賞金王という1つのゴールが近づいているのは感じています」と、前置きした上で「でも、賞金王イコール最強ではないと思っているんで・・・」と話す。常に上を目指す藤田ならではの考えだが、もっと強い選手になりたいという気持ちこそが、40歳を過ぎてなお成長を続けている証なのだろう。(東京都稲城市/本橋英治)