キム・キョンテ、リードを守れず無念の敗退
2010年大会以来の大会制覇へ「マイナビABCチャンピオンシップ」の最終日を2位と1打差の単独首位で迎えたキム・キョンテ(韓国)が、逆転負けを喫してしまった。
2番でバーディを先行し、6番パー5もバーディ。この時点で前日にキョンテ自身が想定した優勝スコア、15アンダーに達していた。しかし、最終日に9バーディ、ノーボギーの「63」でラウンドしたハン・リー(米国)が通算17アンダーで先にホールアウトし、終盤は2打差を追いかける展開に。
最終18番、イーグルを奪えばプレーオフ進出という状況で「力が入ってしまった」と、ティショットを左サイドのバンカーに入れてしまう。続く2打目、「あと2m後ろだったら・・・」と後悔するショットは、バンカーのアゴに当たり脱出できなかった。
3打目はさらにアゴに近い状況のため、チップインイーグルへの挑戦を諦めてパーセーブの通算15アンダー3位タイに終わった。2010年、最強だった男が逆転負けを味わい、はらわたが煮えくりかえる思いをしているかと思ったが、クラブハウスに戻ると心境を淡々と説明し始めた。
「今日は短いパットが、グリーンが速いイメージがあるので・・・。まさか(リーが)63で回ってくるとは思わなかった。チャンスはいっぱいあったけど、しょうがない」と振り返る。悔しい思いをかみしめて質問に答えるキョンテからは、メディアに対する誠意、ファンを大事に思う気持ちがにじみ出ていた。
賞金王を獲得したころは、今ほど日本語が堪能ではなかったこともあり、多くの質問に「大丈夫です」と応えていた。そのころは何事にも動じない強い心が「大丈夫」という回答になっているのかと思っていたが、今考えると細かく心境を語ることが出来なかっただけ。その強さから「鬼」という形容詞を用いたこともあったが、キョンテは鬼どころか、周囲に気をつかう優しい紳士だと改めて感じた。
米国のクオリファイ挑戦のため今大会で一端、日本ツアーから離れるが、2010年「日本オープンゴルフ選手権競技」優勝で掴んだ5年シードを持っているため、仮に米ツアー進出が確定しても年に数試合は日本の試合にも出たいと話す。戦いを終えてコースを出る際に「行ってきます」と笑顔を見せるキョンテの活躍を日本ツアー出身選手の1人として見届けたい。(兵庫県加東市/本橋英治)