2022年 フジサンケイクラシック

コーチの評するド根性 大西魁斗が米国で育んだメンタル

2022/09/05 18:02
最終日、大西の元に内藤コーチが駆けつけた

◇国内男子◇フジサンケイクラシック 最終日(4日)◇富士桜CC(山梨)◇7541yd(パー71)

「根性、あるねえ」と名コーチも常々驚かされる。丸山茂樹の米ツアー3勝をサポートしたツアープロコーチで、大西魁斗を指導する内藤雄士氏は教え子の努力が実った瞬間を喜んだ。

2人が最初に出会ったのは2019年。知人を介して「悩んでいる子がいるから聞いてあげて」と紹介された。ほぼ我流で作り上げたスイングがかみ合わずに悩んでいた大学生は、探求心が強く大のゴルフ好き。初対面ながら次々質問をぶつけられ、スイングについて語り続けて気づけば3時間が経っていた。

「当時はいろいろ崩れている状態だったので、すべて作り直す感じだった」(内藤氏)とイチからスイングを練り直した。大西は試合や勉強の合間に、課された練習法を黙々とやり続ける。「ボクが口を酸っぱくして言わなくても、大西選手はキッチリやる」という泥くささは、幼少時代から身に着けたものだった。

大西は9歳でゴルフ上達のために渡米し、13歳でIMGアカデミーに入門。そのまま南カリフォルニア大に進学した。朝5時に起きたらアカデミーに行って練習、学校に行って、帰宅後もまた夜遅くまで練習。「睡眠時間も少なかった」という生活を中学生から続けてきた。

大学では経営学を専攻し、勉強に追われながらゴルフをする日々。遠征や試合に行くときはオンライン授業を活用し、課題を持っていくのは当たり前。今となっては「楽しい」と思える多忙な学生生活は「日本で家族と一緒に過ごしたいというのはありましたけど、ゴルフがうまくなりたいというのが大きかった」と、がむしゃらに駆け抜けた。

大学卒業後は帰国して昨年プロ転向。下部ABEMAツアーで賞金ランキング15位に入って、今季前半戦の出場権を手に入れた。「アジアパシフィックダイヤモンドカップ」、「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP」で2位に入るなど優勝まであと一歩だった。

内藤氏は、悔しがり焦る大西をなだめながら、今までと同じ練習を続けるよう言ってきた。「いつかは勝てる」。そう信じることができたのは、大西の一番の強みを知っているからだ。「単身で米国に行って苦労している分、崩れそうになっても踏みとどまれるメンタリティと根性が人一倍ある」と、くすぶる中でも耐えて成績を残す姿を見てきた。

今季12試合中7試合でトップ10入り。リランキング1位につけて後半戦の出場権を確実にし、「ここで勝負に出たい」と臨んだ今大会で勝ち切った。プレーオフも耐えてくれると信じていた内藤氏も、さすがに最後はヒヤヒヤだった。「いやあ、本当に…ほっとしました」と表彰式で満足げに笑う教え子を見届けた。(山梨県河口湖町/谷口愛純)

■ 谷口愛純(たにぐちあずみ) プロフィール

1992年生まれ。社会部記者、雑誌の営業その他諸々を経てGDOに入社。ゴルフは下手すぎて2017年に諦める。趣味は御朱印集めと髪色を変えること、頭皮を想って最近は控えてます。

2022年 フジサンケイクラシック