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黒・赤・黒の石川遼 神業アプローチはどこから生まれたのか?

◇国内男子◇日本シリーズJTカップ◇東京よみうりカントリークラブ(東京)◇7023yd(パー70)

20代前半の選手たちが、石川遼の周りに群がる。使い古したウェッジから放たれるチップショットを見て彼らは感嘆し、すぐ真似ようと試みる。2019年シーズン、試合前の和やかな練習日にはそんな光景がたびたびあった。

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空を向くほど開かれたフェースに乗ったはずのボールが、低い弾道でゆっくりと飛び出し、それでいてピンの近くまで転がったかと思えば急激に止まる。「カットではなく、きれいな縦回転でなぜあんなに止まるのか」「どうしてあんなに低く打ち出せるのか」。不思議がる後輩プロたちに、石川は丁寧に説明を施すが、そう簡単に習得できるわけでもないらしい。

技術的に言えば、「ドロー回転をかけるアプローチ」だと本人は言う。「ヘッドをイン・サイド・インに、そして少しアッパー気味に、振り遅れないよう打っている。グリーン面が左から右に下る傾斜だと、スライス回転のボールでは転がってピンから離れてしまうでしょう? 練習のときにはとにかく“大げさに”やってみて、試合中は状況に応じて調節すればいい」

熱心に1Wを振り込む姿がフォーカスされがちだが、石川のチッピングはいまも、他選手から羨望の眼差しを向けられる技だ。ゲーム中に訪れる様々なシチュエーションに対応するため、シーズン中も“引き出し”を増やす意識を常に持っている。

着想は今年2月、米ツアーに視察に出向いた用具担当者からのメッセージにあった。添付されていたのは、会場で撮影されたタイガー・ウッズのアプローチ練習の動画。マジックのように巧みなボール扱い、バリエーションの多さに改めて目を奪われ、夢中になった。「プロゴルファーであっても基本的には、しっかりフェースの芯に当てる(反復)練習で精いっぱい。タイガーくらいなんですよ、そのくらい色んなチャレンジをしているのは」

ともすれば、遊び感覚に見える小さな挑戦の積み重ねに「きっと自分のやっていることも間違いじゃない」と背中を押されたような気分になった。

夏場の好調の影が薄れ、失望にまみれた秋。10月の「ZOZOチャンピオンシップ」。3季ぶりの優勝を含む2勝、賞金ランク3位(当時)で乗り込んだ2年ぶりの米ツアー。結果は51位という惨敗だった。「今年は本当にZOZOのためにやってきた。シーズンで一番アドレナリンが出た試合」。だからこそ、もどかしかった。

「ZOZOで“どしっ”と構えてやるには、日本ツアーであそこまでに5勝くらいしないといけないんじゃないかと思うんですよ。それも逆転…“奇跡”みたいな勝ち方ばかりじゃなくて、他の選手が途中であきらめてしまうような強さで勝つ必要がある。そうでないと、あそこでは自分を信じ切れない」

そして「昔の、タイガーみたいな(国内で)圧倒的な強さがないと…」と続けた。実績もレベルも、計り知れない差があることは、周りの誰より理解している。だが、最高峰であり続けるためのウッズの技術と姿勢を理想に描くのは、幼少期から変わらない石川の原点でもある。

「日本シリーズJTカップ」最終日。石川は黒いニットキャップに赤いセーター、黒いパンツを合わせた。上から黒・赤・黒。ウッズお決まりのコーディネートで勝ったのは、17回の日本ツアー優勝で初めてだった。(東京都稲城市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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