ニュース

国内、アメリカ、ヨーロッパの最新ゴルフニュースが満載!

“アホの傑作”タイ・パタヤの理想郷的ゴルフ場

2019/01/17 11:00

真っ赤な麻シャツを着たその男は、オープニングパーティでみずから焼き上げたラムチョップを上機嫌でゲストたちに振る舞っていた。チーチャン・ゴルフリゾートのオーナー、ナリット・チア・アパー氏(60歳)。18歳でマレーシアからタイへ移住して立ち上げたエビの加工会社は、いまでは従業員3000人規模にまで成長させた。同社はタイ証券取引所が主催する“継続可能なビジネスを称える賞”を18年まで3年連続で受賞している。そして同年、アパー氏はついに、“自分のゴルフ場を持つ”という長年の夢も叶えた。

コースはタイ随一の観光地であるパタヤから南に、車で30分ほど行ったところにある。岩山に金色の巨大ブッダが描かれた観光名所・カオチーチャンの正面にあり、コース内のどこからでもその姿を拝める。総工費10億バーツ(約34億円)以上を費やしたが、土地価格はさらにその数倍したという。

ゴルフ歴30年以上、世界各国でのプレー経験があるアパー氏は、多くのゴルフ場が生き残れずに消えていくのは、コースが町から遠すぎることが原因だと感じていた。「だから、まずは都市に近い良い土地を確保することが課題でした。最終的にここを所有できたけど、本来はゴルフ場にするような土地じゃない。とても高価で、投資として考えると回収は無理ですね」と打ち明ける。

「でも、これは私の情熱なんです。こういうマスターピース(傑作)は“アホ”じゃないと作れない――」。チーチャンが世間一般のリゾートコースと一線を画している理由はこれだ。

出発点はシンプルだ。「私はゴルフを愛しています。だから、ゴルファーがなにを考え、なにを望んでいるかがわかります」と、プレーヤー視点で理想を追った。コース設計は実績ある米Golf Plan社のデビッド・デール氏。芝から打てる広大な練習場や、ショートゲームエリア、パッティンググリーンは当然完備。クラブハウスはもちろん豪華だ。灌漑(かんがい)設備にも投資をして、雨が降っても10分で止めば、すぐプレーできるほどの高い排水性を確保した。

芝生にはこだわった。フェアウェイには地元タイのQGI社が開発したゾイシア・ゼメット芝を世界で初めて18ホールに採用した。この芝は耐熱、耐病に優れ、水や肥料をあまり多く必要としない。緑色も濃く、球が芝によく浮いて打ちやすい。さらに、他のゾイシア芝と違って、米国企業に支払う特許料が不要のためにコストも抑えられる。この芝の採用を押し切ったのは、ほかならぬアパー氏だった。

オープン記念のラウンドでは、まだ封も切られていないテーラーメイドM4のフルセットがレンタルクラブとして用意された。「製品はすでに最高品質のものがそろっています」とアパー氏は胸を張った。「問題があるとすれば、それはサービスです」と、いまはソフト面の洗練に目を光らせている。

「人は強制しても動きません。ここで働く人たちには、このコースが好きだという情熱を持たせたい。『ひとつの家族、ひとつの情熱、ひとつのゴール』。そのゴールは、すべてのゴルファーにまた戻ってきたいと思ってもらうことです」と、氏の哲学はシンプルだ。日々の運営コストを賄うには、1日最低80人のプレーヤーが必要だという。

実際にプレーしてみた。フェアウェイは広く寛容だが、グリーンはアンジュレーションに富み、戦略的に配されたガードバンカーや刈り込まれたグリーン周りからのアプローチは難しい。カップに向けて徐々に高い精度が求められる現代的な設計で、ストレスなく楽しめる。キャディは熱心で、たとえ”ダボパット”でも真剣にラインを読む。プレーしている自分よりも一打に執着していて、初めて“人のためにプレーする”という感覚を味わったほどだ。余談だが、キャディたちはユーティリティクラブのことを「レディ・ボーイ(おかま)」と呼んでいた。なんともパタヤらしいネーミングに苦笑した。

コースはパブリックとして一般に開放されている。誰にでも気軽に来てもらいたいという思いに加え、「メンバーコースだと、なにかを変えたいときに変えることが難しい。(パブリックなら)もし正しくないと思ったら、値段もいつでも変えられるし、自分ができることのすべてを注ぎ込める」というのがその理由。ゴルファーの夢を率先して実現しようとするオーナー社長の理想郷。またここに戻ってきたいか?と問われれば、自分の答えは断然イエスだ。(タイ・パタヤ/今岡涼太)

今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

関連リンク




今週の特集記事  【ブルーダー】 ~もっと自分らしいゴルフ&ライフスタイルを~