2011年 アルストム・オープン・ド・フランス

ゴルフの楽しみをすべての人に <フランス障害者ゴルフの現状>

2011/07/05 11:19
「アルストム・オープン・ド・フランス」の会場に集まった、フランス障害者ゴルフ協会の会員たち

フランス、パリ郊外のゴルフ・ナショナルで開催される「アルストム・オープン・ド・フランス」の開幕前日。練習レンジに一風変わったゴルファーたちが姿を見せた。1人は右腕がない。別の1人は左腕がサリドマイド症。また別の1人は左手がない。そしてもう1人は大型の3輪車いすに乗ったゴルファー。彼らは、フランス障害者ゴルフ協会(Handigolf)に所属する、障害者ゴルフのフランス・ナショナルチームメンバーたち。マイクを握った司会者に紹介されると、一人ずつショットを披露。どの選手も素晴らしく正確なショットで集まった観衆を感心させた。彼らのショットを、1999年全英オープン「カーヌスティーの悲劇」で有名なフランス人プレーヤー、ジャン・バン・デ・ベルデや、日本の大会に出場した経験もあるトマ・ルベが見守り、時折アドバイスする。

フランスは先月半ばに2018年度のライダーカップ会場に選出されたばかり。ヨーロピアンツアーとヨーロッパPGAで構成されるライダーカップ・ヨーロッパ委員会は、ゴルフの発展および「民主化」に、長年、力を入れ続けているフランスゴルフ連盟への支援の一環として、下半身が不自由な人でもゴルフを楽しめるように設計された「パラゴルファー(PaRaGolfer)」というマシンを3台贈呈することとなり、この日「アルストム・オープン・ド・フランス」会場で贈呈式が行われた。フランス障害者ゴルフナショナルチームのメンバー選手たちは、この贈呈式に出席するためにやってきたのだ。

日本ツアー出場経験のあるトマ・ルベも指導を行う

車いすに乗った障害者ゴルファーのジャン=マリーさんは、居眠り運転が原因で交通事故を起こし、下半身不随となった。昔からスポーツマンだったジャン=マリーさんは、身体障害者でもできるスポーツを幾つか試したが、当時は下半身不随の障害者が実践できる競技の数が限られていた。それが、このパラゴルファーのおかげでゴルフが可能になり、ハンデも一時13まで落とすことに成功。現在ヨーロッパナンバーワンの車いすゴルファーだ。彼が愛用するパラゴルファーのタイヤはグリーンを痛めない特別仕様。起伏のあるコースでもスイスイと動き回ることができる。基本的には座った状態で移動するが、スイングするときにはシートが起き上がり、ほぼ直立状態になる。しかし、このマシンは1台20,000(約240万円)ユーロぐらいする非常に高価な代物。今回ライダーカップ・ヨーロッパ委員会が贈呈した3台のうち1台は、フランスで初めて欧州連合のハンディゴルフ(障害者ゴルフ)認証を受けたフランス北部のゴルフコース、アア・サントメールGCに配置され、希望者が気軽に使えるようになる。もう1台はフランスゴルフ連盟が管理し、最後の1台はジャン=マリーさんが使う予定。

「フランスゴルフ連盟のモットーのひとつは、『ゴルフの楽しみをすべての人に』です。『すべての人』には、もちろん障害者も含まれています。本日フランス障害者ゴルフナショナルチームの選手たちが皆さんに披露した様に、身体に障害があっても素晴らしいレベルのゴルファーになることができるのです。そしてゴルフは障害者が健常者と一緒にプレーを楽しむことができる数少ないスポーツのひとつです。今回ライダーカップ・ヨーロッパ委員会から贈呈された3台のパラゴルファーが、さらに多くの障害者へゴルフの道を開いてくれることでしょう」と語るのは、フランスゴルフ連盟の障害者ゴルフ部長シャール・ガンディアさん。フランス障害者ゴルフ協会(Handigolf)は1993年に設立され、1997年にフランスゴルフ連盟の傘下に入った。現在メンバーは120名。うち20名が国際試合で活躍している。日本障害者ゴルフ協会とも交流があるという。

車いすに乗る障害者ゴルファーのために作られた「パラゴルファー」

この贈呈式でフランス障害者ゴルフナショナルチームの実演の司会を務めていたニノさんは、事故で右腕を失った。左腕だけでパワフルで正確なショットを打つ。ハンデは6。「事故で身体の一部を失っても、先天性の障害があっても、人生は終わりではありません。ゴルフはハンディキャップ制のおかげで、あらゆる世代の人々が一緒にプレーを楽しめるし、障害者も健常者と対等にプレーできます。それに、健常者がハンディキャップを持ちたがる唯一の場がゴルフですよね」と、ユーモアたっぷりに語った。

2011年 アルストム・オープン・ド・フランス