弘法は筆を“ちょっと”選ぶ? 欧州で戦う川村昌弘のクラブセッティング
川村昌弘は学生時代、エリート街道を歩んできた。ナショナルチームメンバーの常連だったトップアマだった当時からギアは「代えのきかないクラブが多かった」と振り返る。プロ転向後もメーカー担当者に細かい調整を依頼し、プロトタイプモデルも1本や2本ではなかった。
それが欧州ツアー(DPワールドツアー)に本格参戦した2019年前後から、考え方が変わってきた。今では「世界のどこに行っても手に入ること」がクラブ選びのポイントのひとつ。理由は明確で、世界中を巡るツアーでは日本や米国とは違い、必ずしも毎週、プロのためのフィッティングサービスが充実しているわけではないからだ。
クラブとボールは全て契約先のタイトリスト製品を使用し、1Wは最新モデルのTSi3でプレー。シャフトは数年来、廃版モデルが定番だったが、最近は藤倉コンポジットのVENTUS BLACKで落ち着いた。フェアウェイウッドのシャフトもスペック違いでそろえている。
アイアンは3IからPWまでマッスルバックタイプの620MB(シャフトはトゥルーテンパー ダイナミックゴールドX100)。3I、4Iはコースによって7W(TSi2=21度)、UT(TSi3=20度、23度)に入れ替えることもある。
どれも一般アマチュアもお金さえ出せば、手に入れることができるクラブばかり。調整も最小限で済ませている。国をまたいだ移動ではいつクラブが壊れたり、紛失したりするか分からない。その度にストレスを抱えていては長いシーズンを戦えない。3月に南アフリカで強盗被害に遭い、ギアを全て盗まれたことでその思いはいっそう確信めいたものになった。
「日本ではわがままを言いました。ただ、欧州ではそうはいかない。細かいニュアンスも伝わりにくい。ジュニア時代に『ああでもない、こうでもない』とテストを繰り返していた自分を知っている人からすれば、ずっこけるようなセッティングかもしれません。弘法筆を選ばず、とまでは言いませんが、筆を“ちょっと”選ぶ、というところ(笑)」
唯一、スコッティキャメロン製のピン型パターだけは“ちょっと選ぶ”クラブのひとつ。フェース面をツルツルに研磨し、打球音を甲高くするためにソール部分にスリットを入れる細かいアレンジを加えている。
<川村昌弘のクラブセッティング>
ドライバー:タイトリストTSi3(8度)
シャフト:藤倉コンポジット VENTUS BLACK(重さ60g台、硬さX、長さ45インチ)
フェアウェイウッド:タイトリスト TSi2 フェアウェイメタル(15度、18度)
アイアン:タイトリスト 620MB(3番―PW)
ウェッジ:タイトリスト ボーケイ SM9(54度Sグラインド)、ウェッジワークス プロトタイプ(60度Tグラインド)
パター:スコッティキャメロン ニューポート2 プロトタイプ
ボール:タイトリスト プロV1