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小林至博士のゴルフ余聞

アフターコロナ 男女プロツアーが「ひとつになるとき」はあるか

台湾、韓国でプロ野球が、続いてドイツでブンデスリーガが無観客で開幕し、光明が差してきたスポーツ界。日本では「夏の甲子園」が中止となる一方、プロ野球は6月19日の開幕が決まった。あらゆるトピックがコロナ禍の影響を受けるのは実に忌々しい。夢のある話はないかと考えを巡らせたところ、テニスの男女プロツアーの統合話に思い当たった。

先月末、史上最高の選手といわれるロジャー・フェデラー(スイス)が「世界中で試合が中止になっているいまこそ、ATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)がひとつになるときだ」とのツイートを発した。その後、両会長から男女のトッププロまで、賛意の輪が広がっている。

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ルールの違い、それぞれが認定している大会との権利関係、スポンサーやテレビ放送権の契約など、各論に入ると難しいという説もあるが、少なくとも水面下では実現に向けての努力がスタートすることになるだろう。

ゴルフはどうだろうか。テニスとゴルフは、個人競技であり、見るのもするのも世界中に愛好者がいることなど共通点が多いことは、皆さんよくご存じだろう。両者は興行形態もよく似ている。

選手が、経済学でいうところの職能組合(クラフトユニオン)を結成し、賞金や試合環境、チケットやテレビなど権利帰属の基準を設け、それを満たす大会主催者を認定して、そこに組合所属の選手を派遣するというスキームである。ATPもWTAも、ゴルフのPGAツアーもクラフトユニオンである。

ただし、テニスとゴルフで顕著に違う点がいくつかある。ひとつに、テニスはATPにしてもWTAにしても、ワールドツアーを枠組みとし、文字通り世界を転戦しているが、ゴルフはローカルだ。男子の場合は、PGAツアーが世界一であることに論を待たないが、試合のほとんどはアメリカ国内での開催。欧州は別の職能組合であるヨーロピアンツアーが仕切っている。米国LPGAツアーが世界最高峰を自認する女子はもっと混沌としている。

もうひとつ違うのは、男女の賞金格差である。テニスは、グランドスラムが男女同額で、ツアー全体でも、女子のほうが少ないものの男子の80%はある。しかし、ゴルフの場合、米国LPGAツアーはPGAツアーの20%に過ぎない。もし統合した場合、このご時世に女子の配分が20%というわけにはいかないから、合併すると男子サイドに巨額の「割り勘負け」が発生する。

となると、ゴルフでは無理かな~という気もするが、突破口はある。日本だ。日本のゴルフツアーは、女子ツアーの賞金総額が男子ツアーのそれを上回る。この現象は、ゴルフ界はもちろん、世界の主要なプロスポーツでほとんど唯一といっていい。日本がジェンダーギャップに取り組んでいるとアピールする意味でも、世界に先駆けて男女ツアーの機構を合併してはどうか? それも優越的地位にある女子の主導で。国としての日本は、世界経済フォーラムの男女平等ランキングにおいて、153カ国中121位となっているなど、世界中から酷評されている。きっと、世界は喝采するだろう。(小林至・桜美林大学教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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