2023年 全米シニアプロ選手権

「アメリカ、ファーストタイム」兼本貴司は単身でシニアメジャーに

2023/05/25 13:07
スマホに写真いっぱい

◇シニアメジャー第2戦◇キッチンエイド全米シニアプロ選手権 事前(24日)◇フィールズランチイースト(テキサス州)◇7193yd(パー72)

本当ならもう一生、来ることはないと思っていた。52歳の兼本貴司は初めてのシニアメジャー出場どころか、米国に来たこと自体が初めて。昨年の国内シニアツアーで賞金ランク3位に入って出場権を獲得した今大会。付き添いのスタッフはおらず、スマホに入れた翻訳アプリを頼りに単身で渡米してきた。

レギュラーツアーで2010年までに2勝。前年の「三菱ダイヤモンドカップ」で初優勝を挙げたのはプロ入りから17年後、38歳のときだった。遅咲きのキャリアで「日本でシードを取るのに一生懸命だった。アジアンツアーには行ったことがあるけれど、米国や欧州は縁がないと思っていた」人生は、この齢になって突如一変。シニア参戦2年目の昨年「ノジマチャンピオンシップ箱根シニア」で初優勝を挙げ、とんとん拍子に事が運んだ

日本では他を寄せ付けないロングボールの持ち主

強い日が差し込むテキサス。現地のキャディと懸命にコミュニケーションを取りつつ、練習場ではひとりでスイングチェック。不便なことが多そうで、楽しそうで仕方ない。視界の開けた米国のコースは300yd級の1Wショットを持つ兼本のゴルフを存分に受け入れてくれている。

それでいて高い戦略性に長けた、米国のコースのデザインにうなってばかり。「ロングヒッターにも、そうでない選手にも違う難しさがある。プロにとってはスピンが効いて簡単なフェアウェイバンカーはあえてキレイにされていなくて、ハザードがハザードらしい。ずっと“目からうろこ”」

多くの日本人選手が苦しんできた、国内とは芝質の違うフェアウェイでボールが沈む現象にも好意的。「こっちの芝生はボールが浮かないのがうれしい。浮くとフェースの上に当たってしまうんだ」。ハードヒッターらしい悩みが一瞬で解消されたのにも驚いた。

兼本貴司(右)の打球に一緒に回ったプロもびっくり

開幕前日の練習ラウンドは深堀圭一郎藤田寛之宮本勝昌と一緒に回った。レギュラー時代から実力者であり、人気者だった彼らは兼本にとって「雲の上の存在」だと言う。「一緒に回ろうと思ったら、決勝ラウンドで一緒になるしかない。予選で同じ組になれないからね」

同じツアープレーヤーと言えど、今の境遇も3人とはちょっと違う。兼本は今、試合用ウェアのメーカー提供がなく、ゴルフショップで購入する。今週のシャツも、パンツも。キャディバッグにある4Wはネットで買った。スペアの1Wは他の選手に譲ってもらったものだ。

初めてのアメリカ、を侮ることなかれ。10年前のこの試合、井戸木鴻樹だって同じだった。優勝インタビューで「アメリカ、ファーストタイム」と残してメジャータイトルを日本に持ち帰ったんだ。(テキサス州フリスコ/桂川洋一)

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