ポータブル反発係数測定器
世界ゴルフ科学会議が、7月22日から26日までセント・アンドルーズ大学で開催され、USGA(全米ゴルフ協会)はそこでドライバーのフェースの反発係数(COR)、いわゆるスプリング効果を測るポータブルの測定器を正式に公表した。測定器は「振り子式テスト」と呼ばれ、持ち運びができるためにトーナメント会場での測定も可能だ。
ただ、今回の会議でもっとも驚くべき展開は、キャロウェイ社が独自のポータブル反発係数測定装置について発表するに至ったということだ。キャロウェイ幹部らはその測定法を、ゴルフ統轄団体や他社に無償で供与することも発表している。R&D担当副社長(senior executive vice president for R&D)のディック・ヘルムステッター氏は次のように言う。
「われわれはこの装置をUSGAとR&A(ロイヤルアンドエンシェント)に提示しました。そしてわれわれの測定法を利用したい場合には、誰にでも無償でこのパテントが供与されることを告げました」
キャロウェイ社はその方法がUSGAの測定法と同様に正確で、そしてよりシンプルであると確信している。キャロウェイ社は関連特許の無償供与がゴルフ業界全体の利益につながるという、長年とり続けてきた立場をますます強化しつつあるようだ。キャロウェイは、USGAが自らのパテント(たとえば、ゴルフボールの性能を測定する室内測定装置に関する特許)を開放せず、使用料を取ることについて憤慨しているメーカーの1つである。
会議の参加者はトーナメント会場での反発係数測定は避けがたいという点では合意しているようだった。「それは必ず実施されるだろう」とヘルムステッター氏も言う。
「アメリカでは毎週起きていることだが、見たこともないような、そしてUSGAによる測定を受けていないドライバーを使う選手がいます。それらの反発係数は誰も知り得ない」
ナイキ社のR&D部門ディレクター、トム・スタイツ氏はさらに進んで言う。
「反発係数が0.86を越えているドライバーがある。みんな知っていますよ」
ゴルフ界を二分するルール統轄団体であるUSGAとR&Aは、世界統一基準として、高いレベルの競技者の出場するトーナメントで使われるドライバーの反発係数を0.830に制限し、その他のプレーヤーに対しては0.860(5年を猶予期間とし、その後は0.830に統一される)を上限とするという合意を、まもなく正式に発表すると考えられている。
USGAの調査によれば反発係数が0.860の“ホットな”ドライバーは飛距離を5ヤードないし6ヤード伸ばし得るとのこと。しかし、メーカー数社によればツアープロやヘッドスピードの速いゴルファーなら違いは15ヤードにもなるとされている。「速度制限をするなら、実際の道路を走っているときにチェックする以外には意味がありません」とは、ヘルムステッターの弁だ。
全世界的な反発係数基準が設定されようとしているにもかかわらず、その測定にはシャフトを抜いたヘッドを測定室に持ち込んで行う方法だけしか適用されていないのが現状だ。ポータブル反発係数測定器は公式に認可されていない。しかし、これからというところだ。USGAが開発した、高さ120cmの新しい振り子式測定装置について詳しく説明してくれたUSGA所属の研究者、マット・プリングル氏は、機動性を高めたミニタイプも開発されていることにも言及した。
USGAの測定法では、クラブを振り子式装置にセットしてヘッドのフェース面を固定された金属球にぶつけ、接触している時間を計測する。USGAによれば、フェースが接触している時間が長いということはフェースの弾力性が高いことを示しているとのこと。この時間が反発係数の数値に換算されるわけである。
一方、キャロウェイの測定法ではハンマーをスウィートスポットにぶつけ、フェースの振動のスピードと大きさを測る。既知の物理的エネルギー量から割り出された推定式には、ゴルフボールの特性が異なる場合の変数も考慮され、それらによって反発係数値が推定される。
テーラーメイド社のプロダクト・マーケティング部長、トム・オルサフスキー氏はテーラーメイドでも独自にポータブルの反発係数測定装置を開発したという。その他の会社でも同様な測定法を開発中であることが知られている。各社、動きが急なのは、メーカーとしては信頼性の高く、そしてシャフトを抜かずに測定できる簡便な方法が必要だからだ。現行のUSGAの方法では一本につき1時間を要し、習熟したエンジニアが実施しなければならない。キャロウェイのポータブルテストではおよそ5分間でできる。
USGAとR&Aはポータブル反発係数測定の基準導入に関してはまだ計画していない。USGAがとくに懸念しているのは、ポリマーやその他の非金属素材によるコンポジットのヘッドについてであると、プリングル氏は説明する。もちろん、いかなる反発係数測定法もあらゆるドライバーに対して正確で、再現性が高くなくてはならない。
「慎重にやらなくては」と言うのはスポルディング社の研究者であるケビン・シャノン氏。
「いかなる反発係数テストも、いま使われている素材に対して有効でなければなりませんし、今後、利用される素材に対してもアップグレードして引き続き使えるものでなければなりません」
というわけだが、総合的に推察するに、ポータブル反発係数測定器は近く導入されることになりそうである。
By James Achenbach(GW)