トップフライト落札に慎重な構えの各企業
『トップフライト』の、今年行われた破産競売では面白い状況が見られた。約6社がその資産を巡って競売に参加したにも関わらず、決定的な入札は1つも無かった。
しかし早期の躊躇にはそれなりの理由があった。財務的に苦しんでいる事業の競売戦争には誰もが参加したくない。また、トップフライトが独占していた、一時繁栄していたボール事業のバリューセグメント(低価格商品)は今後、非利益的なスパイラルを生む可能性があるからだ。
ボールの卸売価格は1ダース10ドル以下、小売価格は1ダース15ドル。しかしこのボールの低価格市場は、ここ数年見られてきた価格破壊の圧力に押され気味。また新たな敵が現れた。これは海外で商品製造を行うという業界の傾向だ。今後海外製造者は独自のラインを作り、低価格のボールを米国で販売するだろう。
破格でトップフライトを取得する可能性に魅了され競売者が集まった。このブランドの新オーナーは、海外で製造する等の市場傾向に合わせ米国内で製造を行っているトップフライトの購入を論理的に検討しなければならない。
実際、テーラーメイド‐アディダスゴルフ(TMAG)は先月行われた破産裁判所でトップフライトの工場を購入することに対し、「マサチューセッツ州の工場を所有することは、我々に長期的な利益を与えるものではない」と証言した。そのためトップフライトは、第2の交渉先となるキャロウェイゴルフと接触することを決めた。
「商品が溢れ出し、買手市場になってしまった。低価格ボールを販売している大手量販店はこれを理解しており、買い叩いている。メーカーの多くは市場シェア確保と工場存続のため、この状況を受け入れなければならないと感じている」と業界人は言う。
特にトップフライトは、ナイキゴルフのような大手ボールメーカーがコース外の市場に食い込んできたため、量販店やスポーツグッズ販売店などに更に頼らなければならない状況に追い込まれた。
業界を観察してきた人間によると、このような価格への圧力が市場を変えたと言う。これは決して良い状況とは言えないのである。
彼ら曰く、品質ではなく低価格が現在の市場ではものを言う。このような状況が毎年国内で販売されている4400万個のボールの半分を占める。また低価格市場の20%が、ブランド重視ではなく単なる価格勝負になってきた。大手量販店では特にそうだ。商品の差別化は行われず、ブランドのアイデンティティと価値を減少させている。
「最近は低価格ボール市場で需要を得るための策として、皆が価格に集中し始めている。その結果、価格競争が激化してしまった」と、あるバイヤーは語る。
大手の米国ボールメーカーは未だ海外に製造機能を移管していないが、海外製造に対する危機感は年々増加している。あるメーカーの担当者は「中国でボールを作った方が米国で作るより安いが、我々はこの道を選択しない。中国で製造されている商品は、加工が簡単なサーリン素材の低品質商品だからだ」と話す。
低価格ボールの5-10%が中国、台湾、韓国等で製造されていると言う。インテックやナイトゴルフという名前で主に量販店で販売されているこれらのボールは、一番安いもので18個入りで9ドル。あと5年もすれば低価格ボールの半分は海外の工場で製造されているだろうと業界人は言う。
このような予測は簡単に算出できる:ボールの原価は人件費、材料費、及び諸経費。人件費及び材料費は原価の45%、従業員に対する保険等が残りとなる。
「例えば米国で1ダース4ドルで製造されているボールを、海外では3ドルで製造することができるかも知れない。低価格商品を製造する米国の工場を購入する際はこれを頭に入れておかなければならない」とは業界役員の弁。
このように海外製造需要が高まる低価格ボール市場において、真剣に各企業がトップフライト買収に躍起になることは考えづらいのかもしれない。
Golfweek