アマ・その他ツアー

インパクトはPGAツアー級 “規格外”の16歳・松山茉生のスイングを分析

2024/08/16 16:30
「日本アマ」を最年少で制した松山茉生のスイングを探る

◇アマチュア◇日本ジュニアゴルフ選手権 最終日(15日)◇霞ヶ関CC西コース(埼玉)/男子15歳-17歳(7008yd、パー70)、女子15-17歳(6486yd、パー71)◇武蔵CC豊岡C(埼玉)/男子12-14歳(6811yd、パー72)、◇女子12-14歳(6385yd、パー72)

台風7号接近のため36ホール競技に短縮された「日本ジュニア」が終了し、8アンダー単独首位で第2ラウンドを迎えた「日本アマ」チャンピオンの松山茉生(まつやま・まお/福井工大福井高1年)は3オーバー「73」。優勝した西山陽斗(四国学院大香川西高2年)に3打差の通算5アンダー5位で終えた。

勝負に負けたとはいえ、松山は高校1年生ながら存在感たっぷりだった。体の大きさ(182cm/88kg)はもちろんのこと、振るスピード感、インパクトの圧力、どれをとっても規格外。中でも驚いたのがPGAツアークラスの破壊的なインパクト音だ。アイアンでもスピンでめくれるような高いボールでグリーンをとらえ、同組で回った久常正樹(久常涼の弟)の父親は「あんなに飛ぶ子は今まで見たことない」と目を丸くしていた。

2日目はスコアを伸ばすことができなかった

かくいう筆者も日本アマ最年少覇者(当時15歳344日)を取材したいがために灼熱の霞ヶ関カンツリーまでやってきたわけだから、すでに人を引き付けるオーラを持った選手ということだろう。

このような規格外な選手は、どのようにして生まれたのか? 帯同していた父でありコーチでもある阜司(あつし)さんは「茉生は小学生の頃から飛んでいた」と話す。「3つ上に兄(怜生さん。福井工大ゴルフ部1年生)がいて一緒にゴルフを始めたのですが、やはり兄の方が年上ですから飛ぶじゃないですか。『負けたくない』って思いで、茉生は昔から飛ばしに命を燃やしていました」と振り返る。

年齢を重ねるごとにヘッドスピードは上がり、今は平均56m/s、ボールスピードはマックス86m/sに達するという。その数値はまさにPGAツアーの飛ばし屋クラス。「ちょうど去年の秋に兄がマイナビABCチャレンジに出させてもらってローアマを獲ったんですよ。それでまた火がついて、高校入学までに体を作ろうって」とウエイトトレーニングを始めて、さらに飛距離は伸びた。高校は名門の福井工大付属福井高を選び、ゴルフ部で腕を磨く毎日だという。

特徴的なトップオブスイング

それにしても、なぜここまで飛ばすことができるのか。教え子の試合を見に会場に来ていた目澤秀憲コーチに、松山のスイングを分析してもらった。「初めて力(河本力)を見た時と同じぐらいの衝撃でした。特にフルショットに関してはかなり上質。この年代であれだけ飛ばせて、しっかりとしたスイングができているのは末恐ろしい限りです。朝の練習場で見て、ヘッドがマットに擦れる音がとにかく長かった。つまりそれだけインパクトゾーンが長いということ。ヘッドの入りが鋭角過ぎず低く長いインパクトを作れています。これってよっぽど体が強くないとできないですよ」

“スイングが上質”とはどういうことか。「大柄で体がある人は上半身のパワーに頼りがちで、ボールにぶつけに行くことが多いんです。でも松山選手の場合はそれがない。下半身を上手く使って効率的な動きをして飛ばせています」。いつの間にかスイング動画を撮っていた目澤コーチは、「ほらっ、ココ見て下さい」とダウンスイングのシーンを切り取って見せてくれた。「右ひじがずっと遠いままでしょ。フラットなプレーンのドライバーで右ひじが遠いところをキープするのは難しいですが、彼の場合それがインパクトまでできている。利き手というのはどうしても力が入って、右ひじを体のそばに引き付けやすいのですが、それがない。これならボールの手前をダフることはないんじゃないですかね」。右ひじのキープとインパクトゾーンの長さはセットというわけだ。

ハーフウェイダウンで右ひじが体に近づかない

「今まで多くの選手を見てきましたが、ロングゲームで飛ばすのはやはり才能が大きい。飛ばせといっても急に飛ばせられるものでもありません。彼は15歳の時点ですでにその技術を持っていて、今のクラブで効率よく飛ばす術を心得ています」と賞賛。実際に松山のドライバーショットは、この日幾度となく330yd先のフェウェイをとらえていた。

松山はこの先プロの試合にも登場する見込みで、男子下部のABEMAツアー「ダンロップフェニックストーナメントチャレンジinふくしま」(8月29日~)、レギュラーツアー「バンテリン東海クラシック」(9月26日~)、「日本オープン」(10月10日~)に出場予定。規格外の16歳のスイングを、ぜひ生で見てほしい。(埼玉県川越市/服部謙二郎)