馬場咲希に響いた「背筋を伸ばして」 53歳トップ女子アマとの出会いの話
◇女子アマチュア◇日本女子アマチュア選手権 3日目(15日)◇秋田CC(秋田)◇6409yd(パー72)
周りから頭ひとつ抜け出た長身は昔、馬場咲希(代々木高3年)にとってはコンプレックスだった。女性で、175cm超の背丈は他人からの視線が集まりがちで気恥ずかしい。まだ名前が今ほど有名でなかった頃、そんな悩みを打ち明けられた数少ない人がいた。こちらも172cmの長身選手、近賀博子(おうが・ひろこ)は今も現役、53歳の女子アマチュアだ。
学生時代からソフトテニスに打ち込み、実業団(旭化成)でもプレーした近賀は23歳でゴルフを始めた。ゴルフ場でキャディの仕事に就いたのがきっかけで、次第にアスリートのハートがうずいた。プロへの道をあきらめた後もアマチュアとして競技生活を続け、所属の埼玉・久邇CCでの試合をはじめ男性と同じ大会でタイトルを争うこともざらにある。
2人の出会いは馬場の中学生時代。住まいが同じ関東の試合でたまたま同じ組で回った。「背が高いの、目立つし、イヤだなあ…」。悩みを打ち明けた馬場は大先輩に「胸を張っていきましょう」とアドバイスされたという。「大きい子って自然に猫背になる。どうしても隠したくなっちゃうから」(近賀)。体格の違いは恥ずかしいことじゃない。「ゴルフでなくても、ヒールを履いて銀座を歩きなさい」。ユーモアたっぷりの言葉に救われた思いがした。
昨年8月、馬場は「全米女子アマチュア選手権」を日本勢として37年ぶりに制覇。世界一の女子アマタイトル獲得を近賀は「ビックリもなにも、“私の娘”が!って(笑)」と家族のことのように喜んだ。帰国後にプレゼントされた大会のサイン入りグッズは自慢の品だ。
一方、大ベテランにとっても昨年は飛躍の年だった。50歳以上の選手による「日本女子シニア」、25歳以上の「日本女子ミッドアマチュア」で優勝。さらに新設の「アジアパシフィック女子シニア」の個人戦も制覇した。今大会は「ミッドアマ」上位5位の資格で出場し、プロテストを控えた選手や、学生ゴルファーに負けじと予選を通過してみせた。
決勝ラウンドが始まったこの日、2人は一緒にプレーした。予選ラウンドの成績順で組み合わせが決まった時、「いつか日本女子アマで一緒に回りたいと。本当にうれしかった」と馬場。1Wショットでは約80ydの差がつくシーンもあり、スコアは「72」と「79」(近賀)。18歳は最終9番で2mのパーパットを沈めるや否や、長く伸びた両腕を広げ、大先輩の胸に飛び込んだ。(秋田市/桂川洋一)