2009年 マスターズ

悲しさから悔しさへ、石川のマスターズ初挑戦が終わる

2009/04/11 09:00
2日間の戦いを終えR.マッキロイと健闘を称えあう石川遼(Jamie Squire/Getty Images)

予選通過が絶望的となって迎えた最終18番、石川遼はティショットをフェアウェイ左のバンカーに入れ、ぎりぎりの高さで狙ったという7Iのセカンドショットは、バンカーのあごに当たって、すぐ先のバンカーへ入ってしまう。練習ラウンドでも入ったことが無かったというこのバンカーに踏み込むと、石川の視界からはピンもギャラリーも姿を消し、白い砂とボールと空だけが残った。

「僕はどこに居るんだろう…?」その瞬間、石川の胸に悔しさが込み上げてきた。

15番で2オンに成功してバーディを奪い2オーバーとした石川は、予選通過も狙える位置で16番パー3を迎えた。右手前のバンカー越しに切られたピンに対し、石川は練習ラウンドから、「このピンの時は左手前でOK」と、キャディと共に決めていた。しかし、石川はピンを狙った。「あそこでピンを狙いたくなる気持ちになるのは、自分が弱いから。まだあのピンポジションに向けて僕が打っていく実力がないのに、力量以上をコースにぶつけても跳ね返されると言われたのに…」。

バンカーからの2打目は大きくピンをオーバーし、そこから3パットのダブルボギー。気持ちの切れた17番でも、バンカーから寄せきれずに3パットして連続のダブルボギー。「予選通過が難しくなって、悲しい気持ちになりました」と、心も折れた。

18番の深いバンカーの底で、悲しさは悔しさに変わっていた。「練習が甘かったのかな…」。飛距離のあるドライバーショットでも、落下地点でピタリと止めるロブショットでもなく、石川が予選通過をする為に足りなかったものは、「気持ち」だという。同じ組のロリー・マッキロイとアンソニー・キムと比べ、「どんな時でもバーディを狙っていく気持ちが、3人の中で一番足りなかった」と石川は言う。「今日の経験は僕としては珍しいです。自分から気持ちが弱かったと思うことはほとんど無かった。そう思えたのは、すごく幸せだと思います」。コースと2人だけの特別な空間で、石川は心の声で対話した。

20歳でマスターズ優勝という目標を掲げる石川の、夢の第一章は幕を閉じた。石川は、ホールアウト後の18番グリーン脇で、周りに気付かれないように小さく頭を下げてお辞儀をし、コースと来年の再会を約束した。

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