石川遼、来季シード権獲得へ大きな一歩
石川遼と同組で回ったヘンリック・ステンソンが「80」をたたき、1組後ろでタイガー・ウッズとマッチアップしたリッキー・ファウラーは「84」と無残に散った。「ザ・メモリアルトーナメント」最終日、最終組付近には魔物が潜んでいたといっていい。
しかし、石川は粘り強くゴルフを続けた。1番をボギー発進としたものの、3番で2打目を1.5mにつけてバーディ奪取。7番(パー5)でも3打目を80cmにぴたりとつけてスコアを伸ばす。その後、3つのボギーで後退するが、15番(パー5)では果敢に2オンを狙って右の崖下に落とすも、そこから3mにつけるナイスリカバリーでバーディとし、上がり3ホールもパーで締めた。
最終日は「73」、一つスコアを落としたものの通算2アンダーは9位タイで、賞金167,400ドルを獲得。年間獲得額は763,631ドルとなり、昨年の賞金ランキング125位のD.J.トレハンの668,166ドルを上回った。ある人は、頑張ったと評価するかもしれない。だが、ホールアウトした石川の表情は決して晴れ晴れしたものではなかった。
「難しいコンディションに変わりはなかったけど、この中でも伸ばしていかないといけない状況だったので、伸ばせなかったのは悔しいです」。最初に口をついたのは、喜びよりも悔しさだった。「プエルトリコの2位は満足感が大きかったけど、今回は来週も試合があると切り替えられるくらい精神的な余力が残っている。こうして上位にコンスタントにいることで、精神力がついていくのかなと思います」。
今週は淡々とプレーを続けた石川だったが、その気持ちは試合が終わっても変わっていない。「今は目の前の1打1打、1ホール1ホールに集中している。先週もそうだったし、今週もそう。また来週も同じようにやるだけです」。ジャック・ニクラス設計の難コースで4日間安定したプレーができたことに手応えを感じ、来季のシード権獲得に向けて「一歩どころか大きな一歩」と認めるが、まだ道の途中という思いが石川の表情を引き締める。
「フラットな気持ちです。特別自信がついたわけでもない」。米国遠征はまだ2試合目が終わっただけ。全米オープンをはさんで残り3週間の戦いが待ち受けている。
「生まれて初めて」マネジメントに集中して取り組んだという今週。ゴルフの幅が広がったという石川は、こう続けた。「自分のゴルフの道がある程度見えてきた感じです」。“飛距離で勝負”、“小技とパットでスコアメイクする”などまだ具体的には言えないというが、そう感じたのは自らのスタイルで戦い抜き、得られた結果がそれなりに満足できるものだったからだろう。ここはまだ通過点。ほかの誰よりも石川本人がそう感じていた。(オハイオ州ダブリン/今岡涼太)