石川、試合前日の緊張感は本戦以上?
「ザ・メモリアルトーンメント」開幕を翌日に控えた水曜日、大会ホストのジャック・ニクラスが石川遼に用意していたのは、特別な舞台だった。
練習場で行われた開会セレモニーに続いて催されたゴルフクリニック。帝王・ジャックがマイクを握り、プロ選手たちがデモンストレーションを行う。その4選手の一人として指名された石川。最初はブランデン・グレースに続いて登場する予定だったが、3番目に待機していたフレッド・カプルスが、「腰が痛いから先にやらせてくれ」と直訴。大先輩の提案を却下できるはずもなく、カプルスに順番を譲った。
すると、さすがはカプルス。ニクラスと談笑しながらクリニックを大いに盛り上げて、さっそうと引き上げる。舞台袖で石川は自分の心に言い聞かせた。「失敗しても死にはしない。もし大ダフリしても、シャンクしても結局は思い出に残るし、何もなきゃないでいい」。
ニクラスとの接点はまだあまりないという石川。舞台に登場して「緊張しています」という第一声は、ギャラリーの温かい笑いを誘った。その後、6Iで何球かデモンストレーションを行った石川は「4球くらい打ったと思うけど、ほぼ完璧だった。緊張してこのショットが打てれば大丈夫だと思ったし、そういう意味では出場選手の中で一番良い水曜日の練習ができたと思います(笑)」と、安堵(あんど)の表情で振り返った。
「4人の中の一人に入ったのは、びっくりしたし不思議でした。なにか意味が込められていると思いたいし、ちょっとは期待してもらっているのかなと思う」と、主催者ニクラスの好意を受け止めた石川。昔から憧れていたという今大会。グリーンが小さく、フェアウェイからの正確なショットがスコアを左右するシビアなコースを前に、心身ともに最終準備を整えた。(米国オハイオ州ダブリン/今岡涼太)