遼、+5ありイーグルありの今季初勝利
それまで順風満帆だった石川遼に、突然ピンチが訪れた。打ち上げの12番パー4。石川のティショットは左の林方向に飛ぶ。OBと聞いて、打ち直した2球目も1球目と同様に左のOBゾーンに消える。再度、ティショットを打ち直したが、これもまた左へ。しばし、その場で固まっていた石川だが、セーフと聞いてようやくゆっくりと歩き出した。
セカンド地点に辿り着いた石川は、ギャラリーを掻き分けて林の中へ入っていく。スタッフが示した球の場所に行くと、「OB杭が見えないので」と前後に群がるカメラマンやスタッフを制し、自らの目で1球目、そして2球目のOBを確認する。そして数秒後、「ドンマイ、ドンマイ」と、2発のOBを振り切るようにつぶやいて、フェアウェイへと戻っていった。
その瞬間、心配そうに石川の様子を見守っていたギャラリーからも口々に「ドンマイ!!ドンマイ!!」と声が掛かる。「あの“ドンマイ”は、これ以上ない声援で、僕も客観的にそうだなって思えました」と、石川は声援を味方にこのピンチを切り抜ける。パー4で「9」を叩いたが、次の13番パー3のティグラウンドでは、キャディの加藤君に「やっちゃったね」と笑いかける余裕があった。
一気に5つスコアを落としたが、通算10アンダーで首位タイはキープした。2日目に池に入れてダボを叩いた13番では、会心のショットでピンそばにつける。14番、15番とパーで切り抜け、迎えた16番パー5。2打目でグリーン右奥のラフまで運んだ石川は、そこから30ヤードをSWで狙うと、一直線にピンに向かって転がっていき、ピンに当たってカップイン!「思ったところに落とせたけど、思ったよりグリーンが硬くて、下り傾斜が強かった。ピンに当たらなかったらグリーンを出てたと思うし、いくらピンに当たっても入るとは思わなかった」というミラクルイーグルで、グリーンは大歓声に包まれ、中には泣き出す人達も。「(歓声で)耳が痛かったです」と石川は振り返った。
12番のOBにもめげず、最後までドライバーを振り続けた石川は、最終18番でも会心のショットでフェアウェイを捉えると、2打目でグリーン脇まで運んでバーディフィニッシュ。結局、2位のスメイルに3打差をつけての今季初優勝を飾るとともに、来月行われる「全英オープン」の出場権も手に入れた。
17歳にして早くもツアー3勝をマークした石川。「これからも優勝出来るかは全く別だけど、優勝争いを何度か出来る自信はついてきた気がします」と、力強い視線で前を見詰める。留まるところを知らない17歳は、一体どこまで成長していくのだろう。