有村、被災地訪問を控え「どうしても勝ちたかった」
昨年の「スタジオアリス女子オープン」から1年3ヶ月。有村智恵が「スタンレーレディス」最終日に通算15アンダーまで伸ばし、久々のツアー通算8勝目を手にした。その間、何度もチャンスを迎えながらも、最終日の失速により優勝を逃してきた有村。そんな鬱憤を晴らすように、序盤から次々とバーディを重ねていった。
スタートホールの1番で4mを沈めバーディ発進とするが、最大のピンチが3番(パー5)で訪れる。ティショットで「試合であんなボールを打ったことがない」というチーピンが飛び出し、ボールは左サイドのOB杭付近へ。競技委員がロープで白杭と白杭の間を結んで確認するほどギリギリの位置だったが、「ボール一個分、内に入っていた」と辛くもセーフ。そこから2mのパーパットまでこぎつけ、これを沈めてピンチを凌いだ。その後は、4番から怒涛の5連続バーディを奪取。ここで一気に独走態勢を築き、後半は伸び悩んだものの、通算15アンダーでリードを守り切った。
「この試合は何としても勝ちたかった」と明かす有村。「いろいろな理由があった」という1つが、原江里菜、木戸愛ら東北高校OBたちと来週予定している宮城への訪問だ。「できるだけ良い結果を残して行きたいと思っていたので、大事な一週間になると思っていた」。18番グリーン上の優勝インタビューでは、「(初日の)ホールインワンやアルバトロスなど、いい報告ができます」と、その時を思い描いていた。
初日から続く周囲の喧騒は、有村にとって「静かにして欲しかった」と受け入れざる状況だった。「プレッシャーとの戦いだった」と胸中を吐露するなど、目に見えない敵との戦いでもあった。だが、優勝へと繋げられたことで「自分自身いい思い出になるし、優勝したことで皆さんの記憶にも残ると思う」と、カップを手にした後は充実感だけが残った。
来週から2週間のオープンウィークを挟み、いよいよシーズンも後半戦に突入。「これに浮かれず気を引き締めて練習したい」と、その表情から笑顔が消えた。不調からの脱出を図り、一時期はゴルフを“気楽に楽しもう”と気持ちの転換を行ったが、「やっぱり優勝にこだわり、練習に集中する方が自分に合っている」と回帰。3週間後の「meijiカップ」では、さらに研ぎ澄まされた有村の姿が見られるはずだ。【静岡県裾野市/塚田達也】