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<選手名鑑223>バッバ・ワトソン(前編)

■結石放出でスカッと優勝!

12年、14年とダブル・マスターズ・チャンピオンのバッバ・ワトソン(38)。昨年2月のノーザントラストオープンで9勝目を挙げ、公私ともに充実の日々を送っている。この優勝ほどスカッとしたことはなかったかもしれない。

前週のAT&Tペブルビーチナショナルプロアマの試合から下腹部に違和感をおぼえ、週末は血尿が出ていた。実はワトソンも尿路結石の持ち主だったのだ。同じ悩みの選手は意外に多く、デービス・ラブIIIは激痛で棄権、救急搬送で手術ということもあった。ワトソンが最初に異変を感じたのは11年の「チューリッヒクラシック」2日目の16番。腹部に異変を感じ、近くの仮設トイレに駆け込んだら血尿が出ていてビックリ。検査の結果、2つの石があることがわかった。1つは無事に出たが、もう1つは残っていて、いつ痛みに襲われるか不安だったのだ。

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今回の下腹部の違和感と血尿は結石だと確信し、すぐにロサンゼルスに移動。月曜に検査すると石はなく、無事に体外へ出ていたことが判明。何より激痛がなかったことに心底、安堵した。モヤモヤがなくなりゴルフに集中できる状況となったワトソンはアダム・スコットの猛追を1打差で逃げ切り優勝した。あの笑顔には、いろいろな思いがあったのだ。

■意欲的に海外へ 5年間で9か国、22試合

かつてPGAツアーをホームツアーとする米国人選手は海外試合への参加は消極的だった。近年は米国外での公式試合が増え(10月、11月にアジア)、その延長でオフの11月、12月には日本、豪州などの試合に参加する選手が増えてきた。昨季パトリック・リードは欧州ツアーとのデュアルメンバーだったこともあり、頻繁に海外でプレーしていた。ジョーダン・スピースは全豪オープンで14年、16年に優勝するなど、若手は積極的に米国を飛び出している印象が強い。しかし世界ランク20位以内の米国人選手で、この5年間で最も多く海外試合に参加したのはワトソンにほかならない。(2番目はマット・クーチャーで10カ国19試合)

アンジー夫人の母国カナダ、アジア(日本、中国、タイ、マレーシア)、スコットランド、イングランド、昨年はブラジルでもプレーし、9か国22試合。14年の世界選手権シリーズ初優勝は中国開催の「HSBCチャンピオンズ」だった。芝や気候、異なる言語、カルチャー、すべてが刺激的で、アドベンチャー、彼のイマジネーションを刺激しているようだ。昨年の来日は実現せず残念だったが、今年はぜひ日本でプレーしてほしい。

■念願のリオ五輪代表選手も相棒不在で8位

昨年、ワトソンはリオ五輪で米国代表選手になりメダリストを目指していた。父親はタイガー・ウッズの父と同じグリーンベレー(特殊部隊)のキャプテンで国のために力を注いだ人生だった(2010年他界)。ウッズと同じく、父の手ほどきでゴルフをするようになった。そしてゴルファーとして父のように母国へメダルを!と五輪出場へ胸が高鳴る毎日だった。

だが、ひとつ問題が発生した。キャディで親友のテッド・スコットが、健康上の理由でワクチン接種を望まず、リオ行きを断った。代わりにマネージャーのジェイムズ・ランドール・ウェルスが代役になった。スコットは少しでも力になりたいと願い、ウェルスにメールであれこれ指示を出した。しかしキャディの仕事は一夜漬けで果たせるほど簡単ではない。ぎこちないキャディでワトソンは自分のリズムでプレーできず不本意な8位に。「スコットがいないのは長年連れ添った夫婦の離婚のよう」と残念がった。

スコットは全米プロ優勝者ポール・エイジンガーのバッグを担いだ敏腕キャディ。元選手で最初はミニツアーでプレーし、ワトソンとはウェブドットコムツアーで知り合った。互いのゴルフを知り尽くす間柄だ。今も年間10ラウンドは一緒にプレーし、通算ラウンド数は100を超える。スコットはワトソンに一度だけ勝ったことがある腕前でもある。

とはいえ、ワトソンは初五輪を大いに楽しんだ。他競技の観戦と応援に赴き、競泳のマイケル・フェルプスら多くのオリンピアンと交流してインスピレーションを受けた。3年後の東京五輪はワトソン41歳。金メダルのチャンスはあるだろうか。

■ドラえもんもビックリ!? ワトソンモデル21世紀のタケコプター

スロープレー改善とゴルフの新スタイル提言で、近頃はさまざまなカートが登場している。セグウェイ、ゴルフ場用のバイク、スケボーにハンドルとエンジンを装着したゴルフボード。水陸両用のホバークラフトも開発され、ワトソンはキャンペーンとデモンストレーションを担っていた。カートよりかなり大きいが、目の前の大きな池を迂回せず、池の上をそのまま突っ切り、フェアウェイやラフでもスイスイ走る。一昨年から米国内いくつかのゴルフ場が特別料金で導入し話題になった。そして昨年は斬新で全く新しいコンセプトの移動手段が発表された。

“マーティン・ジェットパック・ゴルフ・カート”という一人乗りの超小型飛行機。小型ロケットの形状で背中にエンジンを背負い、立って宙に浮く乗り物だ。その様子は、まるでゴルフ版ドラえもんのタケコプター!?を想像させる。ゴルフに特化したこのモデルはワトソン、オークリー社、マーティン・エアクラフトの共同製作。200馬力で高度は914mまで、速度74キロでの飛行が可能だ。縦横無尽のショット、乗り物が大好きなワトソンの脳裏を大いに刺激している。ロケット型カートにバッグを積み込み、木々上空からの景色を楽しみ、グリーン近くへ着地。現状はバイクのような轟音、価格が1台2300万円と一般化には程遠いが、将来はゴルフの縦移動の日が来るかもしれないとワクワクする。ワトソンはそんな夢も重ねているのかもしれない。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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