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AT&Tバイロン・ネルソン選手権
期間:05/19~05/22  場所: TPCフォーシーズンズリゾート(テキサス州)

<選手名鑑200>ラファ・カブレラベロー

快進撃が続く“おっとり系男子”。クラブが届かなくても、メジャーで首位でもマイペース? (Ross Kinnaird/Getty Images)

■ 快進撃!4か月で世界ランク114位→30位

ダニー・ウィレット(英国)はマスターズ優勝で一気に世界トップランカーの仲間入りを果たしたが、欧州にはもう一人、目が離せない選手がいる。褐色の肌、ダークヘア、笑顔のナイスガイ、スペインのラファ・カブレラベロー(31)だ。同国先輩のセルヒオ・ガルシア(36)をしのぐ勢いで好成績をあげ続けている。1月、2月の欧州ツアー、カタールマスターズとドバイデザートクラシックで2週連続2位タイ。3月から渡米し、世界選手権キャデラック選手権で11位。52シードで出場したWGCデルマッチプレーでは、次々に大物たちを撃破し3位、マスターズ直前のシェルヒューストンオープンでも4位タイ、初出場のマスターズでは17位と破竹の勢いを見せている。世界ランクは昨年末114位から30位に浮上(5月第1週現在)。欧州のポイントランク(レース・トゥ・ドバイ)でも3位と好位置につけ、年間王者も狙える位置につけている。

■ 故郷は大西洋の楽園“カナリア諸島”

カブレラベローは1984年5月25日、スペイン、カナリア諸島7島のひとつ、ラスパルマス島の出身。スペイン本土から南西1100キロ、グラン・カナリア島北部に位置する。本土スペインの大都市マドリッド、バルセロナから飛行機で約2時間半から3時間。平均最低気温15度以上、平均最高気温26度で、「常春の島」、「大西洋のハワイ」と言われる場所だ。カナリア諸島はスペインだがアフリカに近く、文化的には中南米に似ていて、ドイツや英国など、欧州各国の人種が入り混じる。人気のバケーション地で欧州各地から休暇を過ごす人がたくさん訪れるリゾート地としても知られている。

郷土料理は新鮮な魚介類。米・ニューヨークでも、ラスパルマスから空輸で届いた魚、特に鮪はとても美味しく評判だった。日本とも縁があり遠洋漁船艦隊が大西洋に進出して以来、40年以上に渡って海外漁業基地としての歴史があり、日本人学校もある。ゴルフ場は25コースあり、どのコースも総ヤーデージ6000yd台と短く、いわゆるチャンピオンコースはないのだが、そのような環境で、世界レベルのゴルファーに成長したカブレラベローは異例中の異例。2歳下の妹エマ(欧州女子ツアー)、3歳下の弟ミゲルもプロゴルファーとなり兄の躍進に刺激を受け成功を目指している。

■ 7打差の大逆転!衝撃の欧州初優勝

日本のゴルフファンがカブレラベローの名を知るきっかけになったのは、3月のWGCデルマッチプレーだったと思う。4人が総あたりするグループリーグ初戦、優勝候補の松山英樹の対戦相手がカブレラベローだった。予想は当然ながら、世界ランク12番目の松山勝利で、52番目のカブレラベローに軽く勝てると思われた。しかし、松山がまさかの苦戦。カブレラベローは1アップで勝ち、この自信で勢いを加速させた。3位決定戦ではロリー・マキロイを撃破しマスターズへの初出場を決めたのだった。

アッと驚くといえば、欧州ツアー初優勝もそうだった。09年9月20日、オーストリアオープン最終日、トップを走り続けるベン・バーハムに7打差を追って迎えた。その時も優勝候補に彼の名はなかったが、前半5アンダーの『30』でプレーすると、一気に優勝争いに浮上。後半もスコアを伸ばし、17番を終えたところでその日9アンダーをマークした。しかも18番では9mのイーグルチャンス。決めれば欧州ツアー初の『59』達成という場面も訪れたが、惜しくもイーグルならずバーディで『60』。鮮やかな大逆転で初優勝を飾った。彼は当時25歳で、30歳をすぎたガルシアの後継者として知られるようになった。

■ 土壇場のチャンスをつかむ力

カブレラベローは意外性のある選手として存在感を示してきただけでなく、土壇場でしっかりチャンスをつかむ選手でもある。欧州ツアー2勝目となった2012年2月、ドバイデザートクラシックは出場時の世界ランク119位だった。同大会優勝で60位に急浮上し、64位までに与えられる翌週のWGCデルマッチプレーの出場資格を直前で獲得(WGC BS招待、WGC HSBCチャンピオンズ出場権利も獲得)。この試合は2010年全米オープン出場に続く米国での2戦目だった。

2012年、欧州ツアーのWGC アクセンチュアマッチプレー選手権準決勝でも、グレーム・マクドウェルに負けたものの、セミファイナリストになり、世界ランク60位以内に浮上。翌6月の全米オープンの出場資格を得た。さらにセントアンドリュースで開催された全英オープン出場権獲得のラストチャンスとなった2015年のフランスオープン。トップ10の中で出場権のない上位3人までが出場できる条件だった。ジェームス・モリソンが2位、ジャコ・バンジルが3位で獲得し、残り一枠となった。最終日フロントナインでダブルボギーとトリプルボギーをたたき『40』。カブレラベローは絶望的と思われたが、そこからミラクルカムバック!バックナインで2イーグル、1バーディを奪い『29』、トータルスコア『69』で3番目に入り、全英オープン5年連続出場を決めた。

今年のマスターズも2週前は世界ランク52位で出場権がなかったが、WGCデルマッチプレーの3位で世界ランク34位へ急上昇。世界ランク50位以内に入り、土壇場で出場権を獲得した。チャンスをつかむか否か、この差はとてつもなく大きく、ことごとく成功する彼の根性と底力に脱帽だ。

■ “おっとり系男子”クラブが届かなくても、メジャーで首位でもマイペース?

2010年全米オープンに初出場した時のことだった。カナリア諸島を意気揚々と出発したものの、経由地のマドリッドでビザとバゲージのトラブルで乗り継くことができなかった。その夜は叔父宅に泊まり、開催地ペブルビーチに到着したのは火曜の夜。練習は水曜日にしか出来なくなった。水曜日、クラブはフィラデルフィアに向かっていて練習ラウンドを行えず。借りたウェッジでグリーン周りのチェックとコースを歩いただけという不安な状況だった。初日のスタートは7時。クラブが届いたのは直前だったが、彼は焦ったり不安がったりすることは一切なかったという。最初の7ホールで2アンダーとし、一時は単独首位に立った。その後スコアを1つ落としたものの、通算1アンダーで首位のポール・ケーシーらに1打差の4位の好スタートだった。

ホールアウト後、応援に来ていた両親は大喜びで駆け寄った。そしてカブレラベローはこう言った。「首位に立った時のリーダーボードを写真に撮ってくれた?一瞬でもメジャーで首位に立てるのはめったにないからね。記念になるよ」と初全米オープンの緊張感は皆無だった。3日目に『81』をたたき、47位に終わったが、マイペースを貫けるメンタリティが印象に残った。スペインでは、マスターズ2勝のホセ・マリア・オラサバルは50歳を迎え体調を崩し、ガルシアは欧米で通算19勝も、メジャー70試合で未勝利。カブレラベローはスローダウンしたスペインの雰囲気の突破口になるかもしれない。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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