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2016年 ウェルズファーゴ選手権
期間:05/05〜05/08 場所:クエイルホロークラブ(ノースカロライナ州)

<選手名鑑198>ブランデン・グレース(前編)

■ 恐怖の「グリーンマイル」

今大会の会場クエイルホロークラブは、米国でも屈指の名門、難コースで知られる。特に最終3ホールの難度は極めて高く、これまでさまざまなドラマが生まれてきた。16番は478ydの長いパー4。17番パー3は217ydと長く、グリーンの手前、左、奥の三方向は池に囲まれている。18番は478ydと長いだけでなく、左サイドはグリーン奥までクリークが蛇行しながら伸び、プレーヤーにプレッシャーをかける。

この3ホールは「グリーンマイル」と名付けられているが、その由来は、電気椅子による死刑執行を描いたトム・ハンクス主演の映画「グリーンマイル」だ。椅子までの廊下は緑色で、そこにたどり着くまでの死刑囚の心情と、3ホールの難しさをオーバーラップさせ、そう呼ばれるようになった。

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今大会はコース難度が高いこともあり、歴代優勝者は第1回大会(03年)のデビッド・トムズを始め、ビジェイ・シンタイガー・ウッズロリー・マキロイリッキー・ファウラーら、ショットメーカーの活躍が目立つ。今年、グリーンマイルをしのいで勝利をつかむショットメーカーは誰なのか?

■ 世界屈指のショットメーカー ブレンダン・グレース

ショットメーカーと言えば、最注目はブランデン・グレース(27)だ。マスターズ翌週のヘリテージでツアー初優勝。その開催コースは今大会の南に接するサウスカロライナ州ハーバータウンゴルフリンクスだ。コースは部分的に大西洋に面したリンクスでありながら、多くは樫や松の樹木にセパレートされた細長いホールが続く。フェアウェイの幅は平均20ydほどで、上空は枝がせり出し、狭いエアーハザードとなる。平均グリーン面積は3800スクエアフィートで、ツアー平均の半分強と極小サイズだ。コース攻略には自在なショットコントロールが要求され、究極のショットメーカーのコースと言われる。

今年は強風も吹き、例年以上の難度だったが、そこで優勝を飾ったのがグレースだった。7アンダーで首位のルーク・ドナルドに3打差で最終日を迎え、強風下でショットのバリエーションを駆使し、前半だけで5バーディ、1ボギーの猛攻で首位を捕らえた。後半も2バーディ、1ボギーとスコアを伸ばし圧巻の「66」、通算9アンダーの大逆転だった。ベテランのような成熟プレーに彼の底知れぬポテンシャルを感じたのだった。

■ 第三の男

グレースは1988年5月20日、南アフリカ共和国の首都プレトリアで生まれた。ヨハネスブルグから北55キロと近く、アフリカ有数の世界都市、同国の政治的中心都市でもある。05年に、同市議会の決議で市名がツワネに変わった。地理的にはリースベルク山地の谷間に位置し、年間の平均気温が19度と高く、1年中ゴルフを楽しめるところだ。

ジュニア時代には、母国のレジェンドでメジャー9勝のグランドスラマー、ゲーリー・プレーヤー(80)に指導を受ける機会に恵まれ、少年時代からはアーニー・エルス(46)設立の育成基金でゴルフを学び成長した。エルスは29歳の時、父親ニールスとともに、後輩たちをバックアップしようと基金を設立。この活動をモチベーションに世界ランク1位へ、全米と全英オープンで各2勝、世界殿堂入りも果たした。当初は選手たちの遠征費をエルスが個人的に負担するなど手探りだったが、情熱は多くのサポーターを動かし、国家プロジェクトに匹敵する存在になった。基金の本拠地は南ア最高のリゾート&ゴルフ場施設ファンコートで、オーナーはゴルフが大好きなドイツの富豪ソフトウエアSAP共同創業者のハッソ・プラットナーで、彼の強力支援を契機に、次々に大企業のスポンサーがついた。

ファンコートは甲子園球場の500倍近い広大な敷地で、そこに雄大なコースが3つある。05年、女子ゴルフW杯で宮里藍北田瑠衣が優勝を飾ったコースでもある。また、南ア開催のサッカーW杯の際は、日本代表の宿舎になるなど日本人にも縁のある場所だ。恵まれた環境で毎年、男女ジュニア40名ほどが最高の指導を受け、世界に羽ばたいている。ルイ・ウーストハイゼンは2010年の全英オープンで優勝し、基金出身初のメジャー勝者となって、創設者であり指導者でもあるエルスは感激しきりだった。翌2011年には、基金出身で2年後輩のシャール・シュワルツェルがマスターズで優勝し、2番目のメジャー勝者に。そして出身選手で、メジャーに最も近いと期待されているのがグレースなのだ。

■ メジャータイトルに急速接近中

グレースが有望視される理由は、メジャー大会で惜敗を繰り返しているからだ。昨夏、ワシントン州チェンバーズベイGC開催の全米オープンで、ジョーダン・スピースと終盤まで優勝争いを繰り広げた。15番終了時点では、5アンダーでスピースを捕らえて首位タイに並んだ。16番パー4のティに立ったグレースは、1打目を1Wにするか3Wにするか迷った末、3Wを選択。打球は思ったより右へ飛び出し、無情にもOBとなった。16番ホールをダブルボギーとし、優勝したスピースに2打及ばず4位タイに甘んじた。

8月の全米プロでも、優勝したジェイソン・デイ、2位のスピースに次いで3位と好成績を収め、メジャーで度々優勝戦線に加わっていた。メジャー勝者には予兆を感じることが多く、その典型的な例がスピースだ。15年マスターズ初優勝の前年、14年のマスターズで、最終日にバッバ・ワトソンに競り負け2位。グレースもスピースのように前年の惜敗を翌年の優勝につなげるのでは?と思わせる雰囲気が漂っている。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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