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2016年 ノーザントラストオープン
期間:02/18〜02/21 場所:リビエラCC(カリフォルニア州)

<選手名鑑186>ライアン・ラフェルズ(後編)

■ 「ぜひ我が校へ」ミケルソン兄弟からの直電

非凡な才能を見せるラフェルズの元へ、世界各地のゴルフ関係者からアプローチが相次いだ。中でも熱心だったのはミケルソン兄弟だ。フィルの弟ティムはアリゾナ州立大学ヘッドコーチで、優秀な学生をスカウトしようとアンテナを張り巡らせていた。しかし有力選手の獲得は競争が激しく、「どうしてもラフェルズが欲しい」と、圧倒的な実績と知名度の兄フィルの力を借りることにした。2014年秋、兄をアシスタントコーチに招へいし、一肌脱いでもらうことにしたのだ。豪州のラフェルズ宅に電話をかけ、「ぜひ我が校へ」と熱心にスカウト。まさかのミケルソン兄弟からの直電に両親も本人も驚いたそうだが、将来への明言は避けた。その後も受諾する連絡はなく、ラフェルズ獲得は失敗に終わった。電話から2か月後、兄フィルは本業が多忙なこともありお役御免となった。

■ 強力サポーター ジェイソン・デイフィル・ミケルソン

ミケルソンから連絡を受けてから約1年後、ラフェルズは米国への留学、プロ転向、どちらを選ぼうか迷っていた。母国の先輩ジェイソン・デイに助言を求めると、「自分の気持ちのとおり素直に進めばいい」との言葉に勇気をもらった。ラフェルズは「アマチュアでやるべきことは終わった。17歳で若すぎると言われても、今がそのタイミングだ」と、2016年1月14日にプロ転向を表明した。デイと同じエージェントに所属し、ナイキ社のバックアップを得て、堂々と大海に船出した。

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デビュー戦となったファーマーズインシュランスオープンで待っていたのは、約1年前に電話で話したミケルソンだった。ミケルソンから練習ラウンドの誘いを受け、一緒にプレーすることになった。練習と言えども、お互い負けるわけにはいかない。実質的には練習ラウンドという名の真っ向勝負。ミケルソンが勝てばラフェルズが2500ドル支払い、ラフェルズが勝てばミケルソンが5000ドル支払うという条件で、メジャー5勝の45歳と、プロデビューを数日後に控えた17歳のバトルがスタートした。序盤はミケルソン優勢だったが、ラフェルズは最後7ホールで6バーディの猛攻を見せ逆転。1打差でラフェルズが勝利し、プロ転向のご祝儀を獲得した。ラフェルズのほとばしるプレーは、まさにミケルソン好み。母校へのスカウトは失敗したが、ラフェルズの実力を再認識したようだった。ミケルソンはファウラーやキーガン・ブラッドリーらお気に入りの後輩たちに、惜しみなくアドバイスをし、自身も若い世代から刺激を受けてきた。我が子世代のラフェルズも大いに気に入り、ミケルソンはこれからもサポートを惜しまないだろう。

■ 17歳でプロデビュー 思い出の地で見せた粘り

練習ラウンドでミケルソンに競り勝ち、1月28日、ついにPGAツアーのプロデビュー戦が始まり、この試合は異例の展開となった。ツアー通算42勝のフィル・ミケルソン、前週欧州ツアーで優勝したばかりのリッキー・ファウラー、世界ランク7位のジャスティン・ローズらビッグネームが次々に予選敗退。波乱の中でラフェルズは、2日間を1アンダーでプレーし見事、予選突破を果たした。4日目は台風並みの荒天に見舞われたが、“76”で踏みとどまり、43位と健闘した。開催コースのトーレパインズGC(サウスコース)は、一昨年前のジュニアワールド選手権の開催地で、当時、2位に2打差をつけて優勝した思い出の舞台だった。その地でのプロデビュー、予選通過、そして荒天にも関わらず忍耐で踏みとどまった経験は、彼に確かな手応えと嬉しい思い出を加えることになった。

■ Z世代はツアーをどう変える?

一般的にフィル・ミケルソンタイガー・ウッズら61年~81年に生まれた世代を“X世代”、ジョーダン・スピースロリー・マキロイリッキー・ファウラーら75年~95年生まれを“Y世代”または“ミレニアルズ”と呼ぶ。そして95年以降に生まれたラフェルズらは“Z世代”に分類される。

Z世代はインターネットの圧倒的情報量の中で育ち、便利アプリを自在に役立て、「先生はYouTube」という選手も少なからずいる。育成システムも成熟し、トラックマンなどスイング分析の最新機器も活用。ネット世代の彼らにとって、将来の選択も「進学か、プロ転向か」に加え、「ネット大学で学びながらプロ生活」という、かつてなかったアイデアもある。そんな環境で培った柔軟な考え方、生き方の選手たちが、今後、ツアーでどのようなプレーをするのか?どのような影響をもたらすのか?と思いを馳せる。

ゴルフ界で“Z世代”の代表的存在は、LPGAのリディア・コー(97年生まれの18歳)だ。韓国からニュージーランドへ移住し、無敵のアマチュア時代を経て、史上最年少14歳10カ月で、プロの試合で優勝を飾った。プロ転向後、2014年に3勝を挙げ、新人賞と賞金女王に輝いた。2015年9月の「ザ・エビアン選手権」では、史上最年少でメジャー優勝を飾り、男女を通じ、史上最年少の17歳で世界ランク1位に到達した。そのかたわら、韓国の名門、高麗大学校で心理学(ネット講義)を学びはじめ、文武両道のプロゴルファー生活を送っている。96年秋、ウッズがプロ転向した際には、大学中退を疑問視する声が多かったのも事実。ウッズは「いずれ通信教育で卒業を目指す」と答え、意欲を見せたが、結局立ち消えになっている。もしコーのような選択が可能だったなら何かが変わっていたかもしれない。

ラフェルズのキャリアは始まったばかり。スポンサー推薦での出場は今大会を含め6試合ある。チャンス拡大にはスピースのようにトップ10に入り、次戦への出場権を獲得し続けられるかどうか。PGAツアーのメンバーへの道は険しいが、彼のプレーとともに、男子にも登場した新世代の歩み方にも注目したいと思う。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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