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期間:10/29~11/01  場所: クアラルンプールG&CC(マレーシア)

<選手名鑑176>エミリアーノ・グリージョ(前編)

開幕戦を制した23歳のエミリアーノ・グリージョ

■ PGAツアー初戦で衝撃デビュー!開幕戦優勝の23歳

恐るべきルーキーが登場した。アルゼンチンのエミリアーノ・グリージョ(23)は今季初めて米PGAツアーのシード権を獲得し、メンバーになったばかりのルーキーだ。そしてデビュー戦「フライズドットコムオープン」でいきなり優勝を飾った。勝負は混戦から抜け出しケビン・ナとのプレーオフへ。2ホール目で3メートルのバーディパットを沈め、ナを下した。デビュー戦で初優勝を飾ったのは、2013年「ソニーオープン」でのラッセル・ヘンリー以来の快挙だった。昨年末の世界ランクは128位、優勝前は72位だったが、この勝利で一気に36位へ浮上し、メジャーや世界選手権などへの挑戦を決定させ、とてつもなく大きな1勝になった。

グリージョは昨季PGAツアーに5試合参加したが出場権がなく、すべてスポンサー推薦でプレーした。その5試合で2位1回、トップ10に2回という好成績で、ウェブドットコムツアーファイナルズの出場権を獲得した。4試合の獲得賞金で、賞金ランク25位までの選手に翌季のシード権が与えられるのだが、最終戦のウェブドットコムツアーファイナルで優勝し、ランク2位に浮上して今季のシード権を獲得した。4年前にプロ転向した後、欧州ツアーなどで経験を積み、今秋から目標のPGAツアーへ登場した。

■ 射撃のごとくDead Aim

プレースタイルは常にピンをデッドに狙う。リッキー・ファウラーらのように「危険やスリルがないと物足りない」と言う新世代のゴルフだ。グリージョと同世代のジャスティン・トーマス、昨季新人王のダニエル・バーガーらは飛距離が出るので、他選手より短いクラブでピンを攻めることができる。そのため、多少のリスクがあっても成功した時のリワードの大きさを考え、勝負に出るケースが多い。グリージョも果敢に狙う点は同じだが、タイプが少し違う。グリージョは決してロングヒッターではなく、ツアー平均を少し上回るくらい。初優勝した開幕戦での彼の平均飛距離は300ヤードだったが、地面が堅く、距離が出やすい条件だった。彼の飛距離ランクは37位で予選通過選手のほぼ真ん中あたり。彼は同世代のロングヒッターより、やや長めのクラブを使うが、それでもピンをデッドに狙っていた。

彼がアグレッシブになれるのはショートゲームに自信があるからだ。10番(パー4)の2打目はグリーン右手前のバンカーを避け、ピン左を狙うかと思われたが、デッドに狙い打球をバンカーに入れてしまうがチップインバーディ。「デッドに狙い失敗してもパーで切り抜けられる小技がある」、「だから危険を冒しても狙う」という考えに徹し、それが好循環をもたらした。

■ ジュニア時代の選手仲間から「帰れ!」の祝福ツイート

93年生まれのジョーダン・スピース世代の選手たちは、ジュニア時代から仲が良い。ライバルでありながら互いを尊重し、助け合い、真っ向勝負している。グリージョが初優勝した直後、昨季の年間王者で世界ランク1位のスピースは、「エミミミミ、リイイイイイイ!これからたくさん勝つだろう最初の勝利だね。クールだぜ!」とツイート。最も仲良しのトーマスは「Hey ! これから米国でたくさん勝ちそうだから、欧州ツアーに帰れ!おめでとう!兄弟」と楽しいメッセージ。今季からフル参戦のパトリック・ロジャース、新人王のダニエル・バーガー、メキシコ期待の若手カルロス・オルティスらも次々に祝福のツイートをするなど、舞台をPGAツアーに移しても良い仲間だ。ライバルたちはいきなり優勝デビューしたグリージョの底力とスター性を再認識し、彼らも大いに刺激を受けた様子。そのロジャース、バーガー、トーマスもみな開幕戦でトップ20に入る好成績で、勝負はますますデッドヒートしそうだ。

■ ゴルフ界の錦織圭to be !? エリート養成スクールIMGアカデミー

アルゼンチン出身のグリージョは、テニスの錦織圭が留学したIMGアカデミー出身だ。フロリダ州南西部ブラデントンにあるスポーツ教育施設で、テニスのエリート養成機関として発足し、93年から著名コーチであるデビッド・レッドベターを迎え、ゴルフ部門がスタートした。18ホールのゴルフ場、芝から打てる練習場、アプローチ練習場、練習グリーンなど理想的な環境が整う。フィットネス施設、メンタルトレーニングや自己啓発のプログラムなど、学業だけでなく人間形成や身体能力アップのカリキュラムが自由に選べ、専門コーチの指導を受けることができる。現在は野球や陸上、フットボールなど多くの競技でのブラッシュアップを目指す世界80ヶ国以上から生徒たちが集まるインターナショナルスクールで、卒業生は1万2千人を超える。テニスのアンドレ・アガシ、ジム・クーリエ、マリア・シャラポワ、ウィリアムス姉妹らトッププロを輩出。ゴルフもポーラ・クリーマー宮里美香ジェシカ・コルダショーン・オヘアーピーター・ユーライン塚田陽亮ら今後、ますますブレイクを予感させる選手が多数所属している。生徒たちは世界各地、他競技の選手との交流を経験、グローバルな活躍の助けとなる英語も上達し、プロ生活へスムースに移行している。グリージョは3歳上の先輩である錦織と同じく、同地に家を持ち、現在もそこを転戦拠点としている。母校はプロ生活においても重要で、練習施設などをフルに活用している。世界へ羽ばたいたOBはテニスが圧倒的に多数だが、ゴルフも注目選手が続々、グリージョのデビュー戦優勝を皮切りに一気にブレイクしそうだ。

※次回後編はグリージョの強さの秘密に迫る。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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