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2015年 トラベラーズ選手権
期間:06/25〜06/28 場所:TPCリバーハイランズ(コネチカット州)

<選手名鑑162>パトリック・ロジャース

■ 大会テーマは「チャンス」

今大会は米東部へ舞台を移し、ニューヨーク州の北東隣りに位置するコネチカット州での開催だ。今週は松山英樹と同じ92年生まれのパトリック・ロジャース(23)に注目したい。93年生まれのジョーダン・スピースジャスティン・トーマスらに続き、将来が楽しみな選手である。

今大会のテーマの一つは「チャンス」。毎年、注目のアマチュア、期待の若手選手に出場のチャンスが与えられてきた。前週の全米オープンをアマチュア最後の試合とし、終了直後にプロ転向を表明、今大会をプロデビュー戦とする選手が多い。ロジャースも、昨年の今大会がプロデビュー戦だった。当時、スタンフォード大学を3年で中退し、世界アマチュアランク1位でプロ転向を表明。アマ時代の実績が評価され推薦出場を果たした。大学に進学したばかりの2012年も推薦出場でプレーしており、恩も縁もある試合だ。今年はPGAツアーの来季シード権獲得にフォーカスしたいと全米オープン予選会は断念し、今大会はアマ時代を含む3度目の挑戦を迎える。メジャー大会を断念した思いもあって相当な気合で挑むことだろう。

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■ 悪夢の腰痛

昨年、米国期待の大型新人ロジャースのプロ転向は「スピースに次ぐシンデレラボーイ誕生か!?」と話題を振りまいた。しかし、想定外の展開に誰よりも本人がショックだったに違いない。アマ時代の実績で、7試合に限られたPGAツアーへの推薦出場で成績を重ね、ポイントシード権の125位に急接近した。だが、7試合目のウィンダム選手権を腰痛で欠場し、125位ランクインを逃した。結果、残されたのはウェブドットコムツアーのファイナルズからのシード権獲得への道のみとなったのだ。4試合の合計賞金が50位以内であれば獲得となるが、初戦を腰痛で欠場。会場は故郷インディアナ州だっただけに残念がった。腰痛の影響で2試合目は予選落ち、3試合目で8位になったが、最終戦でまた予選落ちし、58位に終わった。念願の出場権は獲得できず、今季は振り出しに戻り、推薦出場枠での限定的な挑戦となった。

■ 母校スタンフォード大学の誇りを胸に

ロジャースは1992年6月30日、インディアナ州エイボン生まれ。エイボン高校での学力は全校3番目、ゴルフも高校3年生までにインディアナ選手権2勝と、文武に長けた学生だった。カリフォルニア州名門私立のスタンフォード大学に奨学生として進学。同大学はスポーツに優れているだけでなく、成績も5段階評価で平均4以上でなければ奨学金での入学は許可されず、ロジャースはかなり優秀な学生だったことが分かる。

大学時代3年間で個人7勝、アマチュアの欧米対抗戦ウォーカーカップでも米国優勝に貢献した。7勝は同校出身でPGAツアーでもプレーしたジョー・クライベルと並び、歴代2番目の最多勝利(最多はタイガー・ウッズの11勝)。しかし、2014年の平均ストロークはスタンフォード大学史上最少70.55で、ウッズの記録を抜いた。同年2月には世界アマチュアランク1位になるなど最注目アマとなった。

スタンフォード大学出身のツアー勝者はトム・ワトソンタイガー・ウッズ、ノタ・ビゲイ。その後、しばらく途絶えたが、ロジャースの躍進で昨年から脚光を浴び始めた。昨年はロジャース、今年はマーベリック・マクニーリーと、2年連続で同大学の学生が米国学生最高賞に選出された。これは96年ウッズの受賞以来の嬉しい出来事で、ゴルフ界でワトソン、ウッズに次ぐ、ツアー3度目のスタンフォード旋風の予感が漂ってきた。

■ 土壇場で見せた勝負強さ

今季のロジャースは昨年が嘘のように輝きだした。シーズンオフに徹底的に腰を治療し、万全の態勢を整えて、2月のウェブドットコムツアー2戦目、コロンビア選手権で同ツアーで初優勝を飾った。この優勝で推薦のチャンスが増え、自身のPGAツアー6試合目のウェルズファーゴ選手権で2位タイフィニッシュ。スペシャル・テンポラリー・メンバー(以下、STM)獲得まであと10点に接近した。(10点は単独61位の獲得ポイント)。

クラウンプラザ招待で74位、次のAT&Tバイロン・ネルソンでは予選落ちして、推薦枠は使い果たした。ラストチャンスとなったのはメモリアルトーナメントだった。同大会はジャック・ニクラス主催の試合で、前年のニクラス・アワード受賞者に出場権を与えるのが恒例だ。同賞は、米国学生の最優秀選手に与えられるもので、ロジャースは前年に受賞し出場資格を得た。崖っぷちの同大会を40位タイで終え、STMを獲得。ラストチャンスを大いに活かした。

■ 只今、増加中!ゴルフ版シェアハウス

今季躍進中のルーキー、ジャスティン・トーマスとは大学は違うが、同じ中西部出身(トーマスはケンタッキー州、アラバマ大学)とあって、アマ時代からの親友だ。成功を目指し助け合おうと、昨秋からフロリダ州ジュピターで同居を開始した。選手たちのシェアハウスではリッキー・ファウラーの4人シェア、キーガン・ブラッドリーとジョン・キュランなど、成功例が続々。そして、なぜか同じ街ジュピターだ。目標の達成、あるいは結婚するまでの期間限定で、気の合う仲間と、練習から日常会話までどっぷりと浸かれる理想の環境だ。ロジャースもトーマスも競い合い助け合うことが絶大な効果だと言う。ツアーには次々に有望選手が出現し、生き残るには与えられた時間に間髪入れず成績を残さねばならない。サバイバルの新しいアイデア「ゴルフハウス」はこれからも増加しそうだ。

■ 超打!歴代2位の飛距離

ロジャースのゴルフの特徴は「飛距離」だ。今季はウェブドットコムツアーと、PGA両ツアーでプレーし、平均飛距離はそれぞれ1位と6位。特にウェブドットコムツアーの平均飛距離は334.5ヤードは、信じられない数字だ。選手のスタッツ計測が始まった98年以降の18年間で、平均飛距離330ヤードを超えの選手は2人しかいない。2003年のビクター・シュワームクルーグが339.3ヤード、2004年、同選手の330.9ヤード、2005年のバッバ・ワトソンの334ヤード。ロジャースの平均飛距離は2003年に次ぐ歴代2位に相当する。ショートゲームにさらに磨きをかけ経験を積めば、ズバ抜けた飛距離が今の何倍も生かされ、松山世代の強敵集団入りは確実だ。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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