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2014年 ウィンダム選手権
期間:08/14〜08/17 場所:セッジフィールドCC(ノースカロライナ州)

<佐渡充高の選手名鑑 129>マッテオ・マナッセロ

■ 同じ歳のスピースに続け!イタリアのマッテオ・マナッセロ

21歳の若さで欧州ツアーですでに4勝、イタリア出身のマッテオ・マナッセロが7月末に米PGAツアーの仮メンバーの資格を獲得。米PGAツアーへの本格参戦を目指す意向を表明した。ツアーの国際化は著しく、マナッセロが加わり外国勢は25か国90選手になった。彼は昨年から急成長の米国ジョーダン・スピースと同じ93年生まれの21歳。ツアーにもう一人、フレッシュな風を吹き込みそうだ。

欧州で彼のファンは「マッテオ・マニア」と呼ばれるほど熱狂的だが、先週の『全米プロ選手権』でも彼の人気は特別だった。爽やかな性格とルックスに、愛称「マニー!」と応援する声や大きな拍手で迎えられた。大会初日は『80』の大叩きで予選落ちしたが、最終ホールでキャップを脱いで大声援に応える姿に、思わず拍手を送りたくなる魅力的な選手だ。

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マナッセロは1993年4月19日、北イタリアのベローナで生まれる。同地はシェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の舞台として知られ、都市の中心部は世界遺産に登録されている。古代ローマの円形競技場など中世の遺跡が残り、その歴史は紀元前まで遡る古都だ。イタリアはゴルフ場が多くあるわけではないが、伝統と格式を守る素晴らしいコースが多い。北部はアルプス山脈、中部は美しい森の丘陵、ローマ遺跡が近くに点在し、多彩で優雅なプレーが楽しめる。マナッセロはゴルフ好きの父ロベルト、母フランセスカとともに3歳からゴルフを始めたが、イタリアのゴルフ場は“大人の社交場”であり、プレーはなかなか叶わなかった。アニメよりゴルフ中継ばかり観るほど夢中になった幼少時代。5歳からコーチに就き着実に力をつけていった。

■ 手強いバンビーノ 最年少記録を次々更新

マナッセロは2009年の「全英アマチュア選手権」にイタリア人として初出場を果たし、124年の歴史の中で、最年少16歳2か月で優勝を飾った。それまでの記録は1966年、ボビー・コールの18歳1ヶ月で、一気に2歳近くを更新。(コールは日本のCMなどで人気だったLPGAの元選手ローラ・ボーの夫)。同年7月にターンベリーで開催された『全英オープン』では13位タイに。世界のトッププロの中でも力を発揮し、ポテンシャルの高さを見せつけた。

『全英アマ』優勝の資格で、翌2010年の『マスターズ』に招待され、史上最年少16歳で出場。そして史上最年少で予選通過を果たすと、ローアマチュアに輝き、ジョン・ジェイコブスが記録したローアマ史上最年少記録17歳を塗り替えた。この出来事で彼の名は世界中に知られることに。21歳の現在は、凛々しいシニョーレ(紳士)だが、当時は少々ポッチャリした愛くるしい少年で、メディアはこぞって「バンビーノ(少年)」が大活躍と伝えたのだった。

『マスターズ』初出場後の17歳で「高校生プロ」に転向。欧州ツアーでプレーを開始し、同年10月に、またも新記録を達成した。スペインで行われた『カスティーヨ・マスターズ』で17歳188日の欧州ツアーで史上最年少優勝の快挙。それまでの記録はダニー・リーの18歳213日で、1歳以上も若くしての優勝だった。その年は大活躍でシーズンを終え、サー・ヘンリー・コットン・アワード(新人賞)を授賞。これも史上最年少での受賞だった。昨年は欧州ツアー『BMW PGA選手権』で20歳37日の大会史上最年少優勝記録を更新。4歳上でマナッセロが兄貴と慕うロリー・マキロイは「5年前に出会った時から輝いていた。彼には大きな未来しか見えない!」と手放しで讃えたのだった。

■ 情熱のプレー 憧れのセベのごとく

初優勝から半年後の2011年4月『マレーシアオープン』でツアー2勝目。この大会は当時初めて世界ランク1位に立った好調のマキロイに競り勝ったのである。翌2012年の『シンガポールオープン』では、プレーオフ3ホール目でイーグルを決めて劇的優勝、『全英オープン』覇者であるルイ・ウーストハイゼンを撃破した。

平均飛距離は270ヤード台で、決して飛ばし屋ではないが、フェアウェイキープ率やパーオン率はトップクラス。ショートゲームの感性、精彩あるプレーで次々に大物に競り勝ってきた。彼の最大の持ち味はガッツだ。憧れはセベ・バレステロス。「炎のように熱く直感的なプレー、何もないところから努力で自身のゴルフを築き上げた、そんな彼の生き方が好きだ」とマナッセロは言う。2003年、マナッセロが当時10歳の時に、生前のセベに練習場で会い、チップショット合戦でマナッセロがセベに勝ったことがある。その思い出が彼のゴルファーとしての原点となったと後に話した。

■ 米PGAツアー参加で今後は?

マナッセロは欧州ツアーを主戦場としており、今季米PGAツアーの試合は、メジャー大会や世界選手権など限られたもの。それらの大会は試合数、賞金、ポイントが欧米両ツアーでカウントされるのだが、マナッセロは7月の『全英オープン』で19位になったことで米ツアーのポイントが、前年の150位を超えたため仮メンバーの資格を得た。レギュラーシーズン最終戦である今週の『ウィンダム選手権』で今季のポイントランク125位に入れば来季のシード権獲得となる。現在のポイントは約280。125位の目安は440ポイントで、今週3位に入れば来季シード権の125位が見えてくる。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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