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2014年 ザ・グリーンブライアークラシック
期間:07/03〜07/06 場所:グリーンブライアーリゾート(ウエストヴァージニア州)

<佐渡充高の選手名鑑 125>トム・ワトソン

2014/07/02 10:00

トム・ワトソン 神様スニードの後継で名誉プロに

今週の注目はトム・ワトソンだ。9月4日で65歳を迎え、今やスーパーシニアだが2005年から今大会開催コースのグリーンブライアーの名誉プロに就任し、同コースで開催がはじまった翌2011年から毎年、試合にも参加しプレーしている。グリーンブライアーは1914年に開場し、前年就任した第28代米国大統領トーマス・ウィルソンがプレーしたことで広く知られるようになり、屈指の高級リゾートとして発展した。政財界の大物たちもこぞってプレーに訪れた。ライダーカップなど国際試合の会場にも選ばれ、さまざまなドラマの舞台となった。

同コースはゴルフの神様サム・スニードが初代名誉プロに就任。コースの顔となり、ますます注目を集めた。気さくなスニードは夕方にふらりとクラブハウス内のバーに現れ、気軽にゴルフ談義を楽しみ、盛り上がることも度々でアットホームな名門コースというイメージが定着した。スニードが2002年に他界してから名誉プロの座はしばらく空いていたが、2005年にワトソンが就任。ゴルフ場オーナーやメンバーたちの総意で熱望され、栄誉あるポストを引き継ぐことになった。ワトソンは「私ごときが敬愛する偉大なゴルファーの後継者になるのは心苦しいが、これ以上の誇りはない。精一杯、重責を果たしたい」と決意を表明。謙虚で礼節を重んじつつ、湧き出るような情熱を感じさせる熱血会見は喝采を浴び、同コースに新たな息吹を与えたのだった。今大会は歴史を刻んだゴルフ場が舞台、そして重鎮ワトソンの目前でプレーする特別な試合である。

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■ 最高齢65歳で米国主将に その理由とは

ワトソンは通算39勝、うちマスターズ2回、全米オープン1回、全英オープン5回、メジャーの総優勝8勝を誇る。隔年開催の欧米対抗戦ライダーカップに4度も選抜され、93年には主将として辣腕を振るい米国チームを勝利に導いた。1988年には世界殿堂入りを果たし、誰もが認めるレジェンドだ。

今秋開催のライダーカップで再びキャプテンに選出。歴代最年長65歳で、主将として采配を振るうことになった。これまでの最年長主将はスニードの57歳で、ワトソンは8歳も記録を更新する。前例なきレジェンド再任の理由は、米国にとって絶対に負けられない試合だからだ。同カップの戦績はこの12年間6大会で米国の1勝5敗と欧州勢に圧倒されている。特に前回は米国が圧勝かと思われた状況下で、主将デービス・ラブIIIが主力選手フィル・ミケルソンらの意見をまとめきることが出来ず、まさかの大逆転負け。次の主将候補で何人かの名が挙がったが、主催の米国プロゴルフ協会は経験や年功序列を一切排除し、勝つことにこだわる起死回生の最後の切り札としてワトソンに依頼した。

ワトソン再登板の主な理由は3点。圧倒的な実績とゆるぎない信頼、強烈なリーダーシップだ。主将に必要な要素を兼ね備える人物は彼しかいなかった。今回も世界ランク上位の錚々たる選手たちがメンバーになるのは間違いないが、個々の実力がどれほど優れていても、彼らの気持ちをひとつにまとめ、個性を生かす戦略がなければチームの勝利は遠い。ワトソンが主将に決まった直後からすでに士気は高まっている。米国選手全員といっても過言ではないほどワトソンを尊敬、彼を目標に自身のスキルを磨いてきた選手も多い。彼の采配を信頼し、ワトソンの持ち駒のひとつに徹し「Yes! Sir」と出陣する姿が目に浮かぶ。そのくらいワトソンは絶対的カリスマだ。

ワトソンも勝利のために65歳とは思えぬほど精力的に動いている。今季は度々試合に訪れ、時には試合に出場し、一緒にプレーしながら選手の実力と個性を確認。ジョーダン・スピースら若い選手とは度々食事もともにし、距離を縮めるなど、密度の濃いチーム作りに余念がない。

■ 日本人に学んだ礼儀、謙虚、信頼

僕が初めてワトソンに出会ったのは36年前のこと。彼は1970年代から80年代にかけ、4年連続賞金王に輝くなど新帝王と呼ばれ始めた時代で、毎年、日本のトーナメント「三井住友VISA太平洋マスターズ」でプレーしていた。大学ゴルフ部だった僕は、幸運にも彼のキャディに指名されたが、雲の上の人の重責を担う興奮と動揺で、初対面の前夜は眠れなかった。しかし彼のオープンでストレート、そしてフレンドリーな人柄で震えるほど感激した。その瞬間が今の僕の原点だ。

翌年もキャディになり、プライベートな会話を交わすうちに米PGAツアーを見においで、と旅費を渡され気がつけば渡米していた。彼がレギュラーツアー時代、試合会場で会う度に食事をしながら様々な助言をもらった。「若いうちに多くの経験を積むべき、チャレンジせよ!」という言葉に従い、僕もしばらくプロとして下部ツアーやカナダツアーでプレーを経験。記者生活に戻ってからはキャディたちと相部屋で取材をしていた時期もあるなど、数年は想定外の生活だった。振り返れば、そのひとつひとつが僕の貴重な財産であり、今、その意味をかみしめている。

昨年ワトソンがトークショーで弾丸来日した際、主催者の計らいでキャディ以来、場所をステージに変え久々に日本でコンビを組ませてもらった。驚いたのは36年前よりパワフルで圧倒されるほど。彼の迫力、気迫にファンも拍手喝采だった。そんなワトソンが度々僕に話すこと、それは「日本人は世界一礼儀正しく、謙虚で、信頼できる人たちだ。私は多くのことを日本人から学んでいる」ということだ。お世辞ではなく、彼の生き方に反映されていると話していた。ワトソンは今大会、そしてライダーカップでも、礼儀、謙虚、信頼の3つを柱に素晴らしい試合へとナビゲートするに違いない。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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