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名勝負演じたスピース 敗れながらも取り戻した“あの頃”の感覚

◇米国男子◇ザ・ノーザントラスト 最終日(27日)◇グレンオークスクラブ(ニューヨーク州)◇7346 yd(パー70)

静寂は瞬く間に歓声に変わった。大勢の観客が取り囲む18番。ジョーダン・スピースは西日に照らされながら、正規の最終ホールとプレーオフの2度、ダスティン・ジョンソンのパットを見届けた。どちらもカップイン。「僕が負けたという感じではない。彼が勝ったんだ」。スピースなりの言葉で優勝をさらったライバルを称えた。

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世界ランク1位のジョンソンと最終組で2サム。スピースはショットメーカーとの撃ち合いに得意のパットで応戦し、3打差首位で出た序盤に突き放した。前半5番に緩やかな下りの9mを決めて2つ目のバーディ。5打差とし、ガッツポーズを見せた。

しかし、グリーン前方に池が広がる6番(パー3)でつまずいた。手前に切られたカップに向かったボールはわずかにグリーンに届かず、池垣に当たって水しぶきをあげた。ダブルボギーを喫し、「ショットはだいぶ良かったけど、ここはミスだった」と唇を噛んだ。

9番から連続バーディを奪ったジョンソンに並ばれると、後半は手に汗握る攻防戦。互いに13番(パー5)をバーディ。スピースが14番を連続で奪うと、すぐにジョンソンが15番(パー3)で獲り返し、再び首位に並ばれた。

迎えた終盤17番(パー3)。1打目をミスしてグリーン右バンカーに入れると、寄せきれず6mのパーパットを残す。相手は1mに寄せてパーは確実だ。外せば窮地に立たされる微妙なスライスライン。わずかに曲がりが足らなかったが、左淵からクルっと1周してカップに消えた。「ポアナ芝は難しかったけど、かなり良いパットが打てた」。

勝機はあったが、この日は相手が一枚上手だった。ジョンソンの正規の18番。外せば優勝を逃す5mのパーパットを沈め、通算13アンダーでプレーオフに持ち込んだ。その1ホール目で、スピースを大きく上回る1Wショットを披露してアドバンテージを手にし、1mに絡めて勝負をつけた。スピースは「彼の(正規の18番の)パットはすごかったし、信じられない」と素直に称え、「それでも僕は自分のプレーに誇りを持っている」と穏やかに語った。

結果につながりはしなかったが、収穫は大きい。フェデックスカップランクは3番手から2番手に浮上。そして何よりも、今週パーオン時の平均パット数で1位を記録したことが気持ちを強くさせる。「パットの好不調の波に悩んでいた。でも“あの頃”の感覚が戻ってきたよ」。手が付けられないほどに強かった、メジャー2勝を挙げて年間王者に輝いた2015年の感覚。敗れてもなお、貫禄を漂わせた。(ニューヨーク州オールド・ウェストバリー/林洋平)

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