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佐藤信人の視点 勝者と敗者

三者三様のプレーオフ 痛感した「入れて終わり」の難しさ

◇国内男子◇フジサンケイクラシック 最終日(3日)◇富士桜カントリー倶楽部(山梨県)◇7566yd(パー71)

リュー・ヒョヌ(韓国)選手が5季ぶりツアー通算2勝目を飾った「フジサンケイクラシック」。勝者と敗者を分けた場面は、プレーオフ1ホール目の18番グリーンにありました。

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結果としては、小平智選手とスンス・ハン(アメリカ)選手がボギーとなり、あっさりリュー選手に勝利が転がり込んだ形に見えましたが、一人ひとりにスポットを当てると意外な心理戦が存在していたように感じます。

まず、小平選手に注目すると、彼はこの試合まで「全米プロ」などの海外の試合で好成績を残し、先月の「ネスレマッチプレーレクサス杯」でも決勝に残るなど、確実に調子は右肩上がり。この日もショットが冴え、7バーディ、ノーボギーの「65」と、勢いそのままにプレーオフに臨みました。

しかも相手は、2人とも海外選手です。観客の後押しが追い風になっていることは周知の事実でした。ティショットで一番良いライに置き、挑んだセカンドショット。グリーンを捉えれば大歓声が沸くことは必至。そこでわずかに力が入ってしまったのか、微妙なダフリを生み、グリーン右のバンカーへ。“目玉”の状態となりました。

その後バンカーショットを経て3mほどのパーパットを外します。一度崩したリズムを元に戻すのは難しいもの。特に勝負のかかったこの状況で、一度勝機を逃した直後に取り返すのは至難の業です。案の定、このパーパットでセカンドショットのミスを取り返すことはできませんでした。

逆にセカンドショットで優位に立ったのは、スンス・ハン選手。彼は唯一パーオンに成功し、大きなチャンスを得ます。2パットでOK、「入れて終わり」というバーディパット。ですが、これが大きくオーバーするというミスパットになってしまいました。

もともと彼は、ジュニア時代に栄光を手に入れ、アメリカン・ジュニア・ゴルフ協会の最優秀選手に選出された過去を持っています。言うなれば、ジュニアのトップに一度立った選手。その彼が大学に入ってスランプに陥り、プロになってからも未勝利。一度ゴルフ界を離れたほど、挫折を味わった経験を持っています。そのような過去を踏まえて考えると、久しぶりの優勝争いで、全くプレッシャーがなかったといえば嘘になるでしょう。

「勝利が転がり込んできた」という言葉が正しいかは分かりませんが、スキを作ってしまった前者2人に比べ、この時点で優位に立てたのは勝者であるリュー選手でした。

彼は非常に安定感のあるステディなゴルフが特徴で、ショットの精度にもショートゲームにも穴のない、強いメンタルを持った選手です。そんなリュ―選手に、ハン選手が折り返しのパーパットを外した直後、同じようなラインの2mほどのパットが残ります。

どのような状況でも「入れて終わり」というパットほど、難しいものはありません。メンタルや技術だけでなく、運や流れも備わって、初めてウィニングパットとなり得るのです。これを決めきったリュ―選手のパットは、紛れもなく勝者のそれ。称えるべき見事なパーパットだったと思います。

今回は三者三様の心理がもたらす勝負の綾が、グリーン上に集約されていましたが、このような誰に転ぶか分からない一進一退の攻防こそが、プレーオフの醍醐味といえるのではないでしょうか。(解説・佐藤信人)

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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