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“世界”を相手に孤軍奮闘 悔し涙の渡邉彩香が得た何か

最後の望みを託したイーグルパットは、内に秘めた強い気持ちを表すようにカップを1mオーバーした。その瞬間、渡邉彩香はがっくりと膝を折り、今にも泣き出しそうな顔を天に向けた。国内女子メジャー「ワールドレディスサロンパス杯」最終日。5打差で逃げるレクシー・トンプソンを追い掛けた渡邉は「69」とスコアを伸ばしたが、2打差の2位に終わった。ホールアウト後は「悔しいです」と、ぽろぽろと涙をこぼした。

序盤、アイアンショットが右に出るミスが続き、3番をボギーとしてわずか3ホールで7打差をつけられた。それでも「まだホールは残っていたし、調子も気持ちも全く切れていなかった」。その言葉はプレーが証明していった。

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7番で7mのバーディパットを沈めると、右拳を2回、力強く振り下ろした。その後はパーを積み重ね、サンデーバックナインに入った14番、15番(パー5)で2m弱のバーディパットを立て続けに沈め、4打差まで盛り返した。

迎えたのは、フェアウェイ中央に大きな1本松のそびえる16番。トンプソンは1Wのティショットを左の深いラフに曲げ、続く2打目も芝に食われて目の前のラフで止まった。一方の渡邉はフェアウェイにいた。

「グリーンまでは150ydでそんなにプレッシャーの掛かるショットではなかった。木の左から8Iで抑えて打って、抑えた分カットしようと思ったけど、左足上がりの分、思ったよりも球が上がった」と、この2打目を松の枝に当ててしまう。それでも、残り130ydの3打目をピンそば1.5mにぴたりと運んだ。

3オンしたトンプソンは、パーパットを外してボギーが確定。渡邉がこのパットを沈めれば、3打差に詰め寄れるチャンスだった。

パットの直前、渡邉は一度アドレスを仕切り直した。「入れれば3打差になる。あと2ホールで何があるか分からないし、すごく大事なパットだとは分かっていた」。わずかに右に曲がるパットだったが、渡邉の球は、カップに触れることもなく左脇をすり抜けた。「スムーズなストロークができなかった…」。そう振り返る瞳に、また涙がにじんだ。

最終18番(パー5)で残り220ydを3Wで2オンさせた。トンプソンとは4打差があり、逆転の望みはかすかだった。「最後は離されたけど、しっかりと2オンして自分らしいバーディが獲れたと思う。もっとできたという気持ちもあるけど、優勝を目標として最終日最終組で世界のトップと優勝争いができたのは良かったと思う」。

優勝したトンプソンは13アンダーで、渡邉は11アンダー。3位以下に5打差をつける事実上の一騎打ちで孤軍奮闘した。賞金ランキングでは6位から3位に上がった。世界ランクは49位前後に上がる見込みだ。だが、今週得た何よりの収穫は、涙となってあふれ出した悔しさだろう。渡邉の熱き思いは、見ている者の胸に焼きつき、消えることはない。(茨城県つくばみらい市/今岡涼太)

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