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模倣からオリジナルへ 米国で主役となった松山英樹の威風堂々

◇米国男子◇ウェイストマネジメント フェニックスオープン 最終日(5日)◇TPCスコッツデール(アリゾナ州)◇7266yd(パー71)

「リーダーボードはずっと見ていました。それはいつも通り」。大混戦となった最終ラウンドも、松山英樹はつぶさに自分のポジションを確認してプレーを続けた。4打差の首位を追い、ハーフターンした直後には2打差に詰めた。終盤15番(パー5)で一時的に単独トップに立ち、最終的には前年と同じようにプレーオフの4ホール目で勝負を決した。目まぐるしく上位選手が入れ替わる米ツアーの醍醐味といえるサンデーバックナイン。5万人を超えるギャラリーの前で、連覇に成功した松山には文字通り王者の威厳が漂っていた。

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ひとつ後ろには首位から出たアン・ビョンフン(韓国)率いる最終組がいたが、彼らのプレーを見ようと振り返る素振りは終始なかった。構造上、前の組のプレーを後ろで待つ時間帯が多いTPCスコッツデール。そんな暇を持て余す時間も、松山の心は穏やかだった。手の指の皮を弄ぶいつもの癖が何度も見られた。傷になったりやしないか心配だったが、別のホールで歓声が上がっても、頑として動かない大きな背中が印象的だった。

フィールドの厚いビッグトーナメントばかりのタイトルを重ね、日本人史上最多の4勝目に達した。恐るべきスピードの進化。そこには米国で過ごした年月を経て変化した、行動や姿勢にあるように思う。

2013年の秋に米ツアーに本格参戦してから、松山は他選手のスイングやクラブに特に敏感だった。ジェイソン・デイ(オーストラリア)やロリー・マキロイ(北アイルランド)といったトップ選手のスイングの動画を入手しては、スマートフォンに目を凝らした。2年前、この大会の練習期間中だってそうだった。リッキー・ファウラージョーダン・スピースの動きに目を凝らし、「上半身の動きが速い…」とつぶやき、悔しそうな顔をした。ドライビングレンジで隣の打席で打っていた「ブルックス(・ケプカ)のスイング、撮れないかな…」と思案していた大会もあった。松山にとって彼らはもっとも身近で、優れた教材に他ならなかった。

昨年の夏場以降、松山にそういった行動がほとんど見られなくなった。ライバルたちとのプレーの機会を重ねて、彼らのスイングの特徴を把握できたこともあるかもしれない。だがその頃、ポツリとつぶやくように言っていたのを思い出す。「もう、大丈夫。“誰かのマネ”はしない」―――それは、世界トップクラスで戦う準備が固まりつつあると言わんばかりの言葉だった。

模倣からオリジナルへ。松山がその段階に移ったことを思わせる行動は、のちに吐露した心境と重なった。米国で、日本で破竹の連勝を重ねた昨年秋、松山の思いは以前と違うものになった。

「自分はできるんじゃないか、やるべきことができれば(結果は)ついてくるんじゃないか、と思えるようになった。他の人じゃなくて、自分がやりたいことを貫き通せばできる。人に合わせるんじゃなくてもっとワガママに、自分を基準にしてやったほうがいいかなと」。取り入れるべきものに対しては素直に吸収する姿勢は失わないが、自分の力を“過小評価”する必要はない。それこそが松山が得た自信だった。

1年前、リッキー・ファウラーとの4ホールにわたるプレーオフ。互いに譲らず3ホール目に向かう途中、場内からは四方で「USAコール」が沸き起こった。まるで主役ではなく悪役。「“個人”対“個人”の試合で、まさかね…」と松山は苦笑いして振り返る。

だがこの日はどうだったか。ウェブ・シンプソンとの一騎打ちでも、多くのファンに名前を呼ばれ、「ヒデキ!アイ・ラブ・ユー!」とも声援が飛んだ。プレーオフ4ホール目、両者が第1打を打ち終えた時についに「USA!」の声があがったが、これはプレーオフをわざわざ見に来たバッバ・ワトソンを発見したギャラリーたちが、興奮して大きくした声だったようだ。

ファウラーやワトソン、もちろんタイガー・ウッズフィル・ミケルソンら超人気選手とはまだ比べる由もないが、松山にはいま、並の米国人選手よりもはるかに多くの声援が飛ぶ。米国で積み上げてきた自信と結果は、着実にファンの数と比例している。

プレーオフでの声援について、松山は「去年は“99対1”だったのが、今年は(自分への応援が)10%くらいはあったんじゃないですかね」と言った。照れ隠しからか、謙虚さからか…こちらは、いまだにずいぶんな過小評価が続いている。(アリゾナ州スコッツデール/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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